なゆーのテキトーブログ

普段はTwitter(@oxygen60499747)より感想兼考察を投稿していますが140字では抑えきれなかったリアルでは言えないアニメへの想いをひたすら綴るブログとなっております。自分が感じた事を上手く言語化出来るように善処します。

「僕が今作に求めていたもの。」バビロン12話[終]率直な感想。

2人で結論づけた善を守る為、悪に犯された善を制してしまった形。そして制した方の善は否応にも悪へ染まらざるを得ず、その染まった悪はもう一人の悪に制される。あの現場にたどり着いた時から既に道は絶たれていた。全て曲世愛の掌だったと。結局、正崎とアレックスが見出した「善」についての結論が報われる事は無く元凶の曲世愛は野放しのまま。

故にこれは物語のラストとしてもの凄く歯切れが悪い。

テーマに対し作品として結論が出たわけでもなく、辛うじてアレックスが見出した定義は曲世に導かれるまま結果的に論破。彼諸共正崎は命を落とすが曲世はお咎めなし。世界に波紋を呼んだ自殺法が最終的にどうなったかも分からない。

だがこれでいいと率直に自分は感じた。

1つはそもそものテーマを結論付けるのが難し過ぎるからということ。

「善とはなにか、悪とはなにか」「自殺法の是非」

勿論、作品としてそれがゴール地点なのであれば明確にその答えを提示してほしいという思いもあった。実際もう少しでその答えを見出しそうなところで齋開化によって有耶無耶にされた11話では流石に不信感を抑えきれなかったし、最終話を終えてもこの論題にはっきりとした答えは出てこなかったように思う。もし出たらそれはそれで職破綻など別の問題が起きそうなものである。

でも考えてみればそれが普通なのだ。身も蓋もない言い方をしてしまうが、現実世界でも未だに絶対的な結論が出ていない事を虚構の物語で、しかも1クールで出そうとしてもこの場合無理な話だったのではないかと思う。いや出してはいけないという言い回しの方が正しいか。

だからこそ、その問題に対する1つの意見が描かれた事。これで十分だよと。それを作品としての結論ではなく、1つ解決への取っ掛りとして捉えて欲しかったのではないか。とても絶対的とは言い難いし個人から発信された小さな枠組みではあるが、1つ吟味に値するであろう考えが出たという点で自分は今作に及第点を与えたいと思う。

ただ、あくまでもそれはアレックスと正崎という1個人からの意見にすぎない。2人の善悪の定義が世界の真理となった訳ではない。もし世界の真理として認められればこれまでの自殺法の波を止められたのかもしれない。

だからこそあそこで2人を殺したのは物語上では胸くそに思うシーンだったかもしれないが、問題に対する濁し方としてはまあ妥当なラインなのかなと思う。おそらく制作陣も善悪の定義について未だ結論は出ていないのではないだろうか。

故に、善悪の定義をあくまでも個人間の見解に封じ込めたままで、物語を終わらせたのではないかと。絶対的な定義は出なかった(出せなかった)ものの、1つの定義サンプルを残したまま幕切れにさせたのはある意味正しい判断なのでは。確かにあれだけ壮大におっぴろげた風呂敷を完璧にたたむことは出来なかった。でも難しいテーマに相当する解決への痕跡、取っ掛かりを残したという点、そして大変歯切れ悪い終わり方ですが、正崎がアレックスを撃った事にそれ相応の筋が通っていたという点で、自分は評価に値する最終話だったと思います。

ですが正直自分が声を大にして言いたいのはそういうお堅いテーマについてではない。

確かに当初自分が8話で観たかった作品の着地からすれば一部不満が残ったものの、その不満を上回る高揚感。確かに覚えたあの興奮は何なのだろう。

勿論、それは曲世愛にある。

申し訳ないですが、自分は今作にHAPPYENDは求めていない。

だってこの作品は曲世愛ありきで作品の面白さが成り立っていると思っているから。彼女の声を聞いただけで身の毛がよだつわ鳥肌がぞわぞわ立つわで作品の雰囲気がガラッと変わる。ボルテージがぶち上がる。退屈から一気に目が覚める9話のラストシーンもそうだった。彼女の得体の知れなさを表す演出や何より背筋が凍るほどの妖艶なボイスがあの高揚感や興奮に繋がった訳です。

ここから思う事は、極論上記で綴った不満は自分にとって微々たる問題に過ぎなかったということ。曲世愛がいて、彼女をミステリアスに仕立て上げる2話や7話のような秀逸な演出があって。それだけで十分盛り上がるわけですよ。彼女の狂気の中に作品としての面白さを見出した、そんな感じでしょうか。

どれだけ善や悪について話そうとも自殺法に関して云々やっていても、所詮曲世愛の魅力には敵わなかった。とてもリアルとはかけ離れている、最早ファンタジーの世界観ですが、これが結論でも自分は構わないと思う。そう思ってしまうほど、自分も彼女に籠絡された1人。事実として概念的な内容が主だった8話や11話よりも曲世が中心にいた7話や2話、12話正崎と曲世が対峙するシーンの方が面白かったのは紛れもない感触。

全体を通しても「バビロン」は彼女が出てくるか出てこないかで面白さが左右されたと思う。特に8話以降。繰り返しにはなるが、そこに加えて料理を作る妻子と体を切り刻む曲世愛を重ねた7話、曲世愛が正崎に取り調べを受ける2話などで見受けられた秀逸な演出が絡むことによって曲世愛の魅力が更に引き立ったのではないかと。

結論としてストーリー面はやや不満はあるが、曲世愛単体だけでそのマイナス面を帳消しにし、むしろ彼女自体が作品そのものを盛り上げるキーパーツであること。彼女が登場してこその「バビロン」だということを改めて印象づける最終話でした。

簡単に言うなら「怖いんだけど面白い」。とんだサイコパス野郎ですね。。。。