なゆーのテキトーブログ

普段はTwitter(@oxygen60499747)より感想兼考察を投稿していますが140字では抑えきれなかったリアルでは言えないアニメへの想いをひたすら綴るブログとなっております。自分が感じた事を上手く言語化出来るように善処します。

2021春アニメ個人的総括、感想

※あくまでも私個人の印象です。予めご了承を。

  [目次]

 

S評価(今季覇権)

Vivy-Fluotite Eye's Song-

『感情と理屈の相互作用』

先の読めぬ展開にインパクトのある引き。

タイムリープを行う100年もの膨大な時間を簡潔に、且つ劇的に纏め上げるSFとしての面白さ。

その中で渦巻く機械らしき「合理さ」と人らしい「情」が織り成すコンフリクト=ドラマとしての面白さ。

特に第1話~第6話に関しては今季ぶっちぎりのクオリティ。

「幸せ」とは何か、そして「心」とは何か。

それが分からぬ限り果たす事の出来ない使命の完遂。では、それを如何にすれば成せるか。いわば、そういったAI達による模索行動が、対象への情や想い入れに繋がっていく

物語の根幹としては、何も持たぬ無の状態では自立出来ないAIという存在に、抽象的な使命を与え、その本質を汲取ろうと模索する過程で、彼女達の中に使命への何らかの感情が芽生える。そういった元々の機械から、人たらしめる感情発現までの過程に何も理屈としての違和感を感じさせなかったのが地味に凄い。

だからこそ、その情を良しとしないシンギュラリティ計画完遂の使命を負うマツモトとディーバとの衝突。この理性と感情との矛盾に序盤から心掴まれるし、これら話の主体が全てAIの中だけで巻き起こっているという今まであるようでなかった作劇。

 AIであっても、よりよい使命完遂の為に模索する姿(何回言うんだw)はまさしく人間そのもの。

そういったAI達の「心」を滲み出させる演出や脚本が秀逸だった。

 

オッドタクシー

『コント×ミステリーの先駆け』

単話としての爆発力なら他作品に劣るものはあるが、

1クール通しての構成力なら今季ピカイチに優れた作品。

可愛らしい動物達の見た目に反し、実にエッジが効いたリアリティのある人間さながらの会話劇。てか、まんま人間。

この動物×人臭さのミスマッチこそ今作第1の色。

そんな会話劇の立役者は何といっても、タクシードライバーである今作の主人公、小戸川によるツッコミであろう。

毎度入れ替わり立ち替わりに乗ってくる乗客の語りに対し、皮肉屋で捻くれた彼の辛辣で、且つちょい喰い気味なツッコミのテンポとワードセンスが決して狙う事なく、平然と自然体のままぶち込まれる。会話の何気ないテンポと、そんな小戸川のキャラ性を主体とした掛け合い模様には初回でクセになった。

また、その最中で確かに散りばめられていく伏線。それらが複数のキャラクターの視点を通じて、時に細かく、時に大がかりに回収されていくサスペンス、群像劇としての面白さもあった。

第1話では、SNS投稿にはまる樺沢というキャラクターがフォロワーからの反応欲しさにタクシー内で小戸川と行った写真撮影、検問にて胡散臭い警官が追っているという指名手配犯、そして清掃員のバイトをしている柿花という男。初回ではこの3組の動向が連鎖し合って1つの本筋(テーマ性)に繋がっていく。

そんな個々のルートと物語との合致が目まぐるしくて途中から目が離せなくなる。また、その個々のルートで掘り下げられるキャラクター達の過去、それが妙に人間としての闇を喰ったリアルさがあって。身震いしつつも引込まれた。

 ベースの面白味である掛け合い模様のド安定さ、そして長い目で見た時のフックも十二分に用意されていて全く飽きさせなかった。あ、あとホモサピエンスのラジオも好きでした笑。

 

A評価(良作)

フルーツバスケット The Final

『呪縛からの解放、そして旅立ちの物語』

5クールに渡り描いてきたシリーズの終着。

脚本という不安定な要素で毎話泣かせてくるのが凄すぎます。

今作について何も言う事はありません。(てか言及が出来ない...)

最高にハートフルな物語をありがとうございました。

そしてお疲れ様でした。

 

不滅のあなたへ(第1クール目)

『真に迫る人生ドラマ』

主人公(フシ)を取り巻くゲストキャラクター達の人生。

孤独の中で楽園を夢見る少年、子供から大人へなりたい少女、障害者としてのアイデンティティを獲得していく少年。主人公のフシと行動を共にするキャラクター達に待ち受ける過酷な運命。それに対して彼等は何を思い、何を受け取り、選択をするのか。そんな地に足をつけた内面描写、人間描写が秀逸

今作は極めて「人間」というものを切実に描いている。

その人の良い面だけではなく、弱みや幼さというものまで赤裸々に映してくるからこそ、画面に中で生きる彼等の成長や変化には心から感情移入し、涙する事が出来る。

まぁ、最初は言葉を話せぬ石同然の存在だったフシの成長の方も一応描かれてはいるものの、感情獲得の過程や言語を話し出すタイミングは割と唐突で、半ばご都合的な存在だった事は否めない。されど彼がいなければゲストキャラクター達の人生も成り立たない訳で。いわば形式上では物語の主役であるが、実質的には引き立たせ役。彼を通して、ゲストキャラクター達のストーリーはより輝きを増していたと思う。

何度も号泣させられました。

 

 シャドーハウス

 『影と人形、それぞれの形』

徹底的に御陰様と生き人形を同一化させている組。

対し、全くこの2人が各々個として確立している組。

生き人形と御陰様の立ち位置が逆転している組、など

・主であれど”影”そのものである「シャドー」

・人形であれど”人間”そのものである「生き人形」

今作の最たる面白さは、対となっているこれら2人の主従関係を複数見比べる事にあるのではと感じた。

・全身影で覆われたシャドーには「無い」もの。

・対し、人間そのものである生き人形には「有る」もの。

それを如何に主が補おうとするのか、前者が後者をどう見なしているのか、そして如何に両者が寄り添っていくのか

これだけでも全く異なる主従関係の多様さがまぁ観てて面白い。

また、シャドー家が求める生き人形、御陰様の在り方。

一番謎が多くミステリアスな存在の意図が見えない分、今の彼等の在り方がシャドー家の掲げる意向からすると「是」なのか「非」なのか。関係性が多用な分、そのどれかは「非」とされてしまうのではないか?という緊張感もつきまとう。特に中盤ではお披露目といういわばふるい落としイベントが用意されている分、そこの差異を考察するのも実に楽しかった。

そして中盤以降のお披露目では、今まで各々の主従関係の在り方がオムニバス形式で別個に進行していたのが、ここで初めて本格的に生き人形&御陰様同士が対面し、交流を深めていく。そこで従来の主従関係が如何に動いていくのか、にも必見。

勿論、ストーリーとしての流れはあるものの、観る側の視点としては最初から最後まで変わらない面白味を味わえるし+エミリコがとにかく可愛い!!そんな作品でした。

 

ましろのおと

『音』

まず、三味線の弾き然り、そこに乗せる歌声然り、キャラクターによって弾く指遣いを変えた作画面を以てしても、演奏シーンには終始圧巻させられた。ここだけでも盛り上がり所の確固たる”華”として十分過ぎる役割を果たしてくれた。

また、 「音」というたったその1つのテーマをここまで細かく、深く掘り下げ展開させたストーリー面も良かった。

亡き祖父が奏でる「音」と自分自身の持つ「音」の間で苦悩する主人公に「継承」という聞き手視点の評価を以て雪の在り方を指し示す春暁のお話や、評価する人だったり状況によって音の評価が異なる厳しさを突きつけられる大会シーン等、最終的に主人公である雪に変化を促す「音」というテーマ性の描きが見事。

第1話と第12話の構成に違和感こそ感じたものの、一貫された本筋の描き自体には文句無しです。第2期で梅子をぶっとばせ!

 

スーパーカブ

『上質過ぎる趣味獲得(カブ)アニメ』

今までは何気なく流していた日常風景への認識、これまで「耐え抜いていた」ものを「追い抜かせる」ようになった事の爽快感など、1人の無趣味だった女の子が、興味の有るものを見出した時の心情変化や主体的な成長への推移が巧く描かれていた。

また、その進歩が、いつも食べてるおかずがこのスーパーだと安値で買える!といった小さな発見=等身大な描きも良い。

また、同じカブ乗りでも色々と楽しみ方が違う。でも、だからこそ、その趣向同士が微笑ましい色染めの攻防や、新しいカブ論の発見に繋がったり、喜びを伝えたくても伝えられないすれ違いだったりと決して共感し合うだけではない同志でありながら「好き」の在り方が異ならせる関係性というのも、どこか男らしく、趣味を嗜む者としての芯をくっている気もして。良き笑。

ただ中盤では、あくまでも趣味を持つ立場という広い括りにおいて理解し易かった序盤の展開に比べ、良くも悪くも割とディープ寄りなバイク好きに特化した話題へと移った事で、無知な私には読み取り難い箇所があったのも事実。(未だにカブで富士登頂させたい礼子の趣向には共感出来ない部分があります....)

また、表現の自由とはなんぞやとばかりのニケツ問題等、望まぬ形で世間から日の目を浴びる時もありましたが、そんな中でも、趣味への「好き」が溢れた3人のカブ道、引いては趣味へ嗜む姿勢におおいに共感しつつ和める。そんな作品でした。

 

SSSS.DYNAZENON

『これぞ、現代版特撮アニメ』

まず誠に偏った趣向ながら、自分は俗に言う特撮モノが大の苦手で...。前作のグリッドマン然り、そして今回のダイナゼノンに対しても。どれも何十年前に流行ったロボットモノの戦闘シーンを、全くそのコンテンツを知らない人、ましてや、世代でもない自分が観て何が面白いのかと視聴前は思っていたし、特に想い入れも持てなかった。(ファンの皆様には申し訳ありません。)

ただ、今作はそんな特撮要素に「人間ドラマ」という初見勢、界隈外の人にも通ずる魅力が大きく加わっていたのが、良い意味で視聴継続の敷居を低くさせていたのが良かった。

主要キャラのほぼ全員が抱えている過去、そして現状への後悔。

端的に言うとその払拭に戦闘シーンを当てはめ、後者にシナリオ上の意味を持たせる事で2要素が見事に噛み合った作劇となり、特撮が苦手な自分でもこの作品だけで十分にアツくなれた。偏見かもしれませんが、特撮モノには縁遠い脚本面や日常パートにおける演出の魅力が詰まっていたと思う。特に第9話以降は必見。

又、日常シーンの中においても、決して誇張させる事なくクスッと笑いを誘う様なワードチョイスや間の使い方を用いた掛け合いも、終始視聴モチベに繋がる面白味を放っていた。

 

東京リベンジャーズ(第1クール目)

『二足?俺達は一足のわらじでやったらぁ!』

個人的には今季トップクラスに好きな作品。

表面上では「ヤンキーモノ×タイムリープモノ」を謳っている本作だが、第12話までの段階では、前者の面白さが大部分を占めていた。のにも関わらず良作の括りにさせて頂きました。それ程、申し分ないヤンキーのカッコ良さに満ち溢れていたと思う。

個人的に今クールにおけるタイムリープ要素は、あくまでも今作の最たる魅力を描く為(=主人公が過去に向かう手段止まり)のお膳立てに過ぎないのでは?と感じてしまった。

確かに、主人公が過去を変えたとしても、根本的なバッドエンドは変えられなかった、それはどうしてだ!?という単話の引きとして活きる事はあれど核心の部分はまだ2クール目の内容次第ですし、如何にして日向死亡の未来を変えていくのか、という過程の面で主人公は未来の情報を効果的に駆使する事も、実年齢大人としての常識的な振る舞いをする事もない。それが泥臭い彼らしさだとは思うが、そのキャラクター性が故に、タイムリープモノ本来のロジカルチックな強みが活きなかった事は否めない。

唯一その強みが出たのは第10話くらいだったのではないか。「これが二度目の人生、リベンジなんだ」←嘗てのトラウマに立ち向かう弱虫な主人公を奮い立たせたこの台詞はタイムリープ要素が無ければ出てこないし、彼が宿敵に向かっていくには必要な原動力といえる。第2クール目では、こういった臆病な感情を論理要らずの勇気で敵に抗っていく快進撃、タイムリープモノとしての合理的な解決法が他にあったとしても、第10話みたく拳を以て敵を征す流れに納得出来る様な展開をもっと観たいです!

ただ、そんな今クールに関してはマイナスとなってしまった要素を優に払拭させるヤンキーモノとしてのカッコ良さにはとにかく酔いしれた。何故拳を以て戦うのか、その確固たる理由を以て戦うマイキーの生き様だったり、戦うべき時以外では手を決して出さない線引き意識、ヤンキー世界と常人世界の区別をした上で組織の長として被害者に頭を下げる姿勢など、人として筋を通す行動の数々には胸が熱くなった。マイキーとドラケンに乾杯。

 

 

恋と呼ぶには気持ち悪い

『突飛な設定から綺麗なストーリーへの昇華』

複数の女性と体の関係を持ちまくる不埒な成人男性、天草亮がJKである有馬一花に一目惚れをしてしまうという取っ掛かり。

そんな女性の扱いに慣れた彼からの積極的過ぎるアプローチに一花にドン引きし、頑なにいなし続ける→懲りずに攻め続けるという気持ち悪さ全開コメディとしての面白さ。

序盤は十分設定の部分で魅力があった。

 ただそこに今作は留まらず、亮の妹視点を交えた兄の過去回想や、恋仇を通した一花の恋心の目覚めなど、他キャラクターを間接的に展開に絡める事で、元の設定や、そこから発展した三角関係に進展や改善へと促すストーリーへと昇華。これが巧い。

ラストには年の差恋愛という亮&一花の前に立ち塞がる壁に踏み込むシリアス展開など、中盤以降は冒頭での面白味に加え、丁寧なキャラ掘りと恋愛ストーリーが無難に面白かった。

コメディとシリアスを行き来しながらも決して軽くなり過ぎず重くなり過ぎない作風で、観易い1クール作品でした。

 

美少年探偵団

『落としの美しさ』

美少年、というストライクゾーンから大きく外れた響きからして申し訳ながら当初は1話切り安定の作品になっていた今作(苦笑)

だがそれ以上に物語シリーズを彷彿とさせる言葉遊びの巧みさ、延いては西尾維新さんイズムを隅々まで感じた作品。

「女性ではなく、乙女だから」「平凡ではなく、平均」etc.......

この様に、ニュアンスが絶妙に異なるワードを並べたて、否定し、最後に的を射た言い回しで落とすといった多用な言葉遣い脚本がどのパートにも刺さりまくっていて。

これが全編通し、本編(本筋)を締める上での秀逸な落とし所にも、日常シーンにおけるコメディにも、そのどちらにも機能していたという点で終始抜かりの無い面白味を持たせていた。

又、その芸術点が一見成立し得ない事象をも説明付けてしまうミステリーモノとしての爽快感にも繋がっているのが、ある種物語シリーズには無い今作の魅力なのかなと。

故に、たとえオチが待たれる2~3話完結の物語ペースでも、日常シーンの部分だけで十分に楽しむ事が出来た。

(続)←これは第2期が待たれます。

 

 

 

憂国のモリアーティ(第2クール目)

『”宿敵”、から”友”へ』

1クール目では犯罪卿とホームズ、前者の境遇を描きながら、互いに正体が分からぬ同士による腹の探り合いがメインで描かれ、

今回の2クール目ではお互い正体に何となく察しがついている。だが、それ故に失速するのではなく、むしろ駆け引きのギアを上げてきたのが今作の凄い所。

互いの正体が透過されたからこそ、天才相当の相手の実力を見込み、自分の大切なものを託す事が出来る。今クールでは第三陣営となる敵等を通して、ホームズとモリアーティが宿敵から唯一対等の実力で語り合える友へと歩み寄っていく。敵と信頼の間で揺れ、真の目的を果たす為には協力を仰ぐしかないんだと。ここの関係性の変化が実にアツかった。

1クール目から犯罪卿の仕組んだ事件を解決していく中で、やがて犯罪卿の正体だけではなく、彼の目的が「腐敗した貴族社会の転覆」にあると気がつくホームズ。

この時点でホームズはモリアーティの事を同じ天才としてだけではなく、人間としても彼を認めたというのが良いですね。

そして最終話、

今までの罪、悪を背負い、自らの死を以て貴族と平民の垣根を越えた理想の世界を作ろうとするモリアーティ。

いわばコードギアスR2におけるルルーシュ(ゼロ)のよう。だがその作品と異なる点は世界を変える為に悪役を担った者に対等たる理解者がいたという事。自決を図るモリアーティの元に探偵としてではなく友として駆けつけるホームズの説得。

以降の劇的な展開にはグッと来ました。

モリアーティが犯罪卿として成した貴族と平民の歩み寄り、「残された者」であるルイス達のこれから、そしてシャーロック・ホームズシリーズにおいて、モリアーティが何故極悪人として描かれているのか?という回収までしてくれ文句無しの最後でした!

細かい演出面もビンビンに決まっていたと思います。

 

灼熱カバディ

『新鮮×王道』

未知なるスポーツの掘り下げ×各人物にスポットを当てた超克

どちらかが欠けても作品として成立しない。

これらの二足のわらじが終始両立されていたのが良かった。

個人戦にもチーム戦にも化け得るといったカバディ特有の競技性を終始映し出しながら、そこにサッカーからカバディに転身した主人公の苦悩や、才能を持たざる側である部長の境遇を仄めかしていき、それらのモヤモヤが実際の試合シーンで、即ちカバディのルールを活かしきった上で浄化されていくストーリーとしての爽快感、これらの絡ませ方が巧かった。

マイナー競技を布教させたいが為に今作があるだけではなく、しっかり物語の方にも魅力を感じられるしアツくなれる、そんなwin-winな作品に仕上がっていたと思う。

 

 

B評価(普通作)

ゾンビランドガリベンジ

『アイドルモノとして or 第1期の続編として観るか』

年を取らない故に、なりたい大人になれない儚さ。

「壊れた」体と「壊れぬ」絆との対比。

「命」がない存在故に、『命』歌えし者に夢を託す構図。

「死」した野心家と、「生」の可能性との対比など。

ゾンビという性質を持つフランシュシュの面々だからこそ、様々な面白い構図を持たせられるのは今作ならではの強み。

それが前期同様に観られた事は良かった。

ただ、第1期と比較して半ばストーリーの質よりも、ライブパートの方がメインになってしまっていた事、もっと言えばライブシーンで話の粗を誤魔化そうとしていたパートが個人的には見受けられてしまった事など、アイドルアニメにシフトし過ぎたが故の良い所と悪い所が浮かび上がってしまっていた点は否めない...

 

 

エイティシックス(第1クール目)

『今季屈指の”演出”アニメ』

今作がやりたい事はきちんと描ききっているとは思う。

だがその色が必ずしも面白さに繋がるとは限らない

今作を一言で表すとこんな感じでしょうか。

確かに主人公であるミリーゼが自身の偽善っぷりを突きつけられるまでは面白い。つまり、本題に入る前ですね。

如何に彼女の抱く理想が夢物語であるのか、如何に無謀なのか。

そして86の「死」に対して如何に彼女が無知であるのか。

そんな86達との距離感を身近な小道具を用いて仄めかしてくるメタファーが秀逸だった。時に86の「死」を散る「花」に見立て、戦場で流れる「血」をシュークリームの「シュー」に見立て、ミリーゼの掲げる理想論に対する「疑念」をミリーゼの服の装飾品が外れる動きに当てはめる等して、これらをアルバパートと86パートの隔絶された2視点を以て散りばめていく

故にミリーゼは一切気付かない。口では散々理想論を掲げる傍らで、壮絶な86達の実情には一切目が入らない。そんな皮肉描写がとても良い味を出していた。

だが、そこから本題、つまりミリーゼが86の実情を知り、歩み寄ろうとする段階に入った時のストーリーのあっさり感というか馴れ合い感が個人的には味気なかった。例えば第5話にて、感情的に言い放ったミリーゼへの突き放しを影で反省していて、半ばツンデレ気味に、罪悪感故にミリーゼを受け入れていくというセオトリッカのキャラ造形からしても、今まで散々アルバに差別を受けているキャラクターにしては少し甘めな作劇なのかなと。元々の題材、世界観の割には物語が薄く感じられた。

又、差別を受けている86側の心持ちに関しても良くも悪くも入り込めない所が多く。例えば「屑に屑な事されたからといって復讐しに行くのは同じ穴の狢になってしまう。だから己の生き様に恥じぬよう最後まで戦い続ける」という、戦に対する負の感情が後日談の如く取っ払われた86達に人間味がないと感じてしまった。

何でしょう....こういう思考はあくまでもゴール、結果的に行き着く所なのであって、大事なのはそこまでにどういう思いを重ね、どういう苦しみ、仲間との日々を味わってきたのか、という積み重ねがあって初めて納得出来る思考というもの。しかし、そんな過程を省き、結果を切り取って見せ場とするにはいささか綺麗過ぎる。作品の形としてアリだとは思うが、題材特有の抉みだったり悪意に欠けていて、キャラクターに感情移入する事は最後まで出来なかった。実際に86達の「死」に対しても、彼等をさほど掘り下げる事なく至らせるので、衝撃や感動というものもなく、実質「死」だけを切り抜いたお涙頂戴状態になっていた気も....

そういった作風が自分には合わなかった。

劇伴と主題歌に関しては最高でした!!

 

 

 いじらないで長瀞さん

『イジメ?否、これはイジりである!』

Mっ気の方御用達特殊性癖アニメと思う事無かれ。

一見すると、一部の人の趣向にしか刺さらない様なヒロインの属性と萌えシチュ。だがそれらを誰が観てもカワイイ!と思わせてくれる様に調整されていた実に良心的な作品だったと思う。

たとえ褐色ギャル属性でも可愛く見せる事は出来るんだ!という作者さんからの意思を勝手に感じ取っていました笑。

初対面から先輩の弱みや陰キャ性をこれでもかと突き、半ば嘲笑気味な表情で指摘していく中でも、時折やり過ぎてしまっていないか長瀞さん側が気に掛ける描写から、先輩が嘗て本気で虐められていた幼少期での体験と対比させ、「悪くないな」と先輩自身の意思で長瀞さんからのイジりを許容する第1話。

この時点で長瀞さんの言動がイジメではなく、イジりなんだと確信出来、今作に対する敷居が良い意味で低くなった様な気がする。イジメに対する不快感は見事に払拭。

第2話以降も焦りを連想させる汗や動揺、照れ等を用いて長瀞さんの先輩イジりをイジメにさせない配慮がしっかりされていて、同時に長瀞さんの優しい人柄と可愛さを終始演出。

第1話ではイジメの象徴だった取り巻きのギャル達も、後の回で彼女達の干渉を長瀞さんが止める(=先輩をイジって良いのは私だけという独占欲の表れ?)展開で長瀞さんの可愛さを引き立てる側に一役買っていたし、最終的には2人の仲を良い意味で進展へと促す良キャラになっていた点も昇華のさせ方が巧いなと。

中盤こそは長瀞さんがデレて終わるオチが一貫されていたせいで、若干マンネリ化していたのは否めないが、終盤の文化祭編からガラリと話が動き出し、実質告白の様な絵のモデル申請や夫婦の様なイジりイジられ問答がとにかく微笑ましかった。

1クール通してしっかり長瀞さんというキャラクターの魅力を享受出来る作品でした。萌えは無限大ですね。

 

MARSRED

『確かに力は感じた』

俗に言う雰囲気アニメ止まりだったのは否めない。

ただ、その中でもヴァンパイアと人間との恋路がストーリーに落とし込まれた時の演出面は秀逸でした。

 主に記号を用いた間接的な見せ方。たとえキャラクターの掘り下げがなくとも、演出だけでその人物の状況や心理面を効果的に表す力を特に序盤にはひしひしと感じた。

他にも、 永久の命を持つヴァンパイアと有限の命を持つ人間が故に、共に「生」を添い遂げられない恋人の儚さや、日光が浴びる事が出来ない&人とは違う存在故の「日陰者」として生きるヴァンパイアだからこそ見出せる演劇(虚構)の価値だったりと、今作が描きたかったテーマ性、それを伝える脚本力やドラマ性には惚れ惚れする所もありました。

ただその要素がどうも局地的だったといいますか.....。その良さが終始通して感じられなかったのが1クール作品としては出力不足とも感じてしまったのが残念なポイント。

中盤(主に山上さんパート以降)に関しては、複数のキャラクターの視点がごっちゃごちゃで、その単体の視点が結果的に何を見せたいのかがイマイチ分からず、それらがリンクする事もなく淡々と進んでいくので、(単なる読み取り不足というのもあるかもですが)個人的には今作の良い所を汲取る事が出来なかった。

 

転スラ日記

『転スラファンには堪らない至高のキャラアニメ』

まず個人的に今作は、転スラ本編を観てる方でないと、その面白味を完全に享受出来ないとは思う。

まぁ昔ながらの日本の四季、そこに適した楽しみ方や風流など、子供の頃にやった事や見た事はあるけど、案外、現代日本では中々味わえない様な古風の日常風景に和むという楽しみ方でいえば、『転スラ』を知らない方でも完走出来たのかもしれない。

ですが、今作はあくまで『転スラ』という作品のスピンオフ。

今まで、本編の中で中心に描かれてきたストーリーや本筋が今作には一切ないからこそ、そこだけではどうしても陽の当たらなかったキャラクター達の別の一面にフォーカスする余裕が生まれる。実際リムルに救われて彼の仲間になって以降はさほど出番がない様なキャラもいたので、そんな彼等の魅力的な色を発揮させてくれる良い機会になってくれたとつくづく思う。(出番があったとて半ば舞台装置になっているキャラもいたので....)

兄妹であり親子でもある様なベニマルと我等がシュナ様との掛け合い模様や、本編でもおなじみゴブ太&ハクロウによる師弟コント、また主であるリムルからの寵愛を巡って喧嘩するシオンやランガのやり取りなど、その他大勢のキャラ達の動向が描かれ、本編を通して誰かしらのキャラに愛着を持った方であれば、より一層理解を深められ、発展した国の平穏ぶりと四季の色にクスッと笑いが零れ癒やされる、そんな全12話でした。

特に自分がキャラアニメとして今作が素晴らしいと思ったのは、本編中でリムルに救われたキャラ達の後日談たる動向がしっかり観られた事。とりわけ、オークロードのボスであるゲルドとゴブリンキッズとのふれあいには何度も涙させられましたね。何故ゲルドは今作中であんなに農業へ勤しんでいたのか、そして何故第8話にて、同族に見立てた置物に食べ物を供えたのか、第1期で彼の境遇を観てる方であればグッと来る事でしょう。

本作の第1期でキャラクターの境遇をリムルが救ってはい終わり!とするのではなく、その後の生き方まで寄り添って描いてくれた所に愛を感じた。

 

戦闘員、派遣します!

『このすば要素、半・減』

清々しいまでに悪事のスケールがしょうもない小悪党と、富と財に対する下心なら人一倍な守銭奴

そんな2人の屑キャラ達によるお前が言うな系コント。+αアリスたんの辛辣ツッコミ

これが今作一番の観所であり、個人的に笑えたポイント。

片方が己の欲望をおおっぴろげにして暴走する様を、もう片方が若干引いた様子で咎める。この構図に対して、「いやツッコんでる側も人の事いえんだろ」と笑。そう被せる様に第三者であるアリスたん(ないしは我々視聴者)による第二のツッコミが入る。

この一連の3人コントがこのすばにおけるカズマとアクアを彷彿とさせる様な面白さがあった。

ただ、良くも悪くもそこしかコメディとしての笑いが無かったのが残念でした。その原因は、他主要キャラである「ロゼ」と「グリム」にあるのかなと。

彼女達もキャラとしての素材は十分ですし(『このすば』にもめぐみんという純情おバカキャラはいますし)、専用回もあったのにも関わらず、それらを上記級の笑いに変換出来ていなかった印象。もっと振り切って欲しかった......

また、話の展開としても、六号達が地球からのスパイだとスノウにバレる所から変にシリアス調な作劇になったり、ロゼの過去話など、今作のジャンルにそぐわない(結果的に笑いへ昇華出来ていない)回がいくつかあって。総合的に見ると、今作の強みがうかがえる回とそうでない回、このブレが激しかった印象。

あ、ちなみにカワイイ系異常性癖トラ男さんはイイキャラしてました笑。

 

C評価(凡作)

擾乱

『キメきれないもどかしさ』

実に惜し過ぎる作品。

第1章:雪村咲羽視点、中村浅陽視点に渡る二重の復讐劇。仮初めだと気付いた姉妹による家族愛の描き。

第2章:逃れられぬ過去の呪縛

第3章:真の黒幕との対峙。

どの章でも毎度盛り上げに足る要素、これからどうなっていくんだ!?と引きを持たせるストーリー然り、キメ回までの上げ方は良いのに、肝心のキメる回の所をキメきれないもどかしさ。これを終始感じていた。本筋達成のあっけなさや「え?そこそんなんで終わらせるの?」「いや生きとるんかーい!」といったイマイチ附に落ちない締め方など、不完全燃焼の募る形が多かった印象。本当に各章起・承・転までは良いんですよ。

例えば第3章に関しても、二重の復讐劇の決着を、徳川政権打倒を以た葛原の「死」と咲羽の「生」を構図的に対比させながら綺麗に締めていくのかな、と思いながら観ていたら、無事に戦いを終え、帰路につく咲羽の後ろから突然何者かに毒針(?)みたいなのに刺されて、よろよろと生き延びながら浅陽との会話の中で死に絶えるという終わり方。←いや何があった?誰が殺した?そもそも葛原の願いはどこにいったん?彼にも同情出来る余地はあったではないかとツッコミたい。そしてCパートで数年が経ち17才となった浅陽に姉の人外めいた力が継承され、幕は閉じる。←う~ん...アリにはアリだけど浅陽視点その力というのは姉を不幸に招いた存在。それを姉が生きていた証などとして肯定的に捉えさせてくれる様な展開の1つや2つ見せて欲しかった。惜しい。

また、今作の舞台が、徳川政権下でありながらまるで文明開化さながらの要素が垣間見える異郷、まるで江戸×明治の世を掛け合わせた様な世界観には興味惹かれた。慶喜に部下達が謁見するシーンで観られた様式和と洋の対比など、もっと掘り下げれば深みが増す素材があるのに、それを十分に活かせていない印象も。

 

 

フルダイブ

『コメディとシリアス、ボタンの掛け違い』

まずコメディ要素について。

ゲームなのに痛覚がある、本来あるべきチュートリアルが無い、失敗してもやり直しが利かない(=ゲームオーバーするとゲームハードがぶっ壊れるというクソ仕様)

こ、こんなのリアル同然じゃないかぁぁぁぁぁぁぁ(ツッコミ)

以上が今作の最たる”お笑い”としている所。

そう、このコメディはいわば出オチのようなもの。第1話時点ではこのコメディ要素だけで観応えこそあったが、早々にして天丼状態となり飽きが回ってくる。そこで肝となってくるのが主人公の声を務められていた山下大輝さんのアフレコ。時に上ずり、かすらせ、抑揚を効かせる等して、声だけで幅を効かせた山下さんの迫真たる全力ツッコミが個人的にはハマってて、全12話もの話数を通して爆笑出来る声あてをしていらっしゃった。いわば今作のコメディ要素を支える大黒柱の如く活躍をされていた(何様)

次にシリアス要素について。

上記で語った通り、今作はアフレコの魅力はあれど、とてもではないがコメディ要素だけで話は回らない。

そこで話数が進む度に浮かび上がってくる1つの本筋、それは

「現実世界におけるトラウマに背を向ける主人公ヒロの成長譚

・フルダイブRPG内で巻き起こる様々な理不尽たる災難

・現実世界における中学時代のトラウマの記憶

天丼気味になっていくコメディ展開の中で、今までどの失敗にも向き合う事なく、感情任せにあたり、人や環境のせいにしながら目を逸らし続けているという主人公像が明らかになっていく。

それを観ながら、「あれ?それじゃあ今作は前者のゲーム視点と後者における現実視点が徐々にリンクしながら、主人公がトラウマを乗り越えていく展開になるのではないか?」という物語としての期待が我々視点出来るようになる。

ゲーム×現実。これら2要素の開示によって最終的な今作の落とし所(本筋)を鮮明にさせた。これさえ出来てしまえば及第点の〆となるのでは?そういう訳で私は最終話まで視聴を継続した次第。

結論、別段リンクが無い訳ではなかった。

ただ活かしきれていてもいなかった印象。

ゲーム初っぱなで親友を殺した過ちと向き合い、和解する第6話に関しても現実世界におけるトラウマと繋げる訳でもなかったし、最終話に関してもラスボスと対峙してこの場合にのみヒロは克服するだろうという限定的で中途半端な落とし所にも残念。

また、中盤~終盤に関してはそのリンク展開が一筋の期待だったのにも関わらず、それを匂わせる様なシリアスな雰囲気を突然ギャグに転換させるといったすれ違いも起きていて=需要と供給が一致していなかったというのもあって視聴が苦しい場面も...。

ツンデレの中にブラコン味を見え隠れさせる妹ちゃんこそ、大変大義であったものの、ストーリーとしては正直肩透かしに近いラストでしたね...申し訳ないです。

 

バクテン!

『体操アニメ、というよりはキャラアニメ』

良かった所はありました。

それは、今作の本筋と思われる「憧れは繋がっている」というテーマ性が、終始一貫されて描かれていたという事。

まず主人公である双葉翔太郎は第1話にてアオ高(略称)新体操部のバク転を見て。そしてその部員2人は選手時代の監督のバク転を見て、そしてライバル校であるシロ高(略称)新体操部の部員は、幼少期にアオ高の良夜のバク転を見たその時の憧憬故に新体操への道を志している。このバクテンへの憧れというのが主要キャラの間で共通して繋がっているという相関図。

そしてその関係性を第11話にて、怪我を負ってる状態でも僕は先輩達(=自分を新体操の道を志す切っ掛けくれた方達)と共に演技をしたいんだ!という翔太郎の切実さに繋げる第1話のフリ回収は面白かった。ただ1クールだけ活かされるのがそれだけ?という意見も否めません...

今作を面白い!と言えたのはこのくらいでしょうか。

残りは、良くも悪くもキャラアニメ的な作風

実家であるまかぼこ屋を宣伝してくるキャプテンや、盆栽好きやアイドル好き、任侠映画好きなキャラクターなど、とりあえず色がある設定を投入してそのキャラ同士でワチャワチャさせましょうよ、的な作品の方向性を途中から物凄く感じた。

最初こそ楽しかったが、最後まで見てもそのキャラ達の色がコメディとしての笑いや微笑ましさにしか繋がらないというのが物足りなかった。何故好きなの?そしてその趣味が体操にどう結びついてくるの?といった更なる掘り下げがされずに、表面的なワチャワチャした日常シーンが物語の中心になってしまった事が個人的には惜しく感じてしまった。

唯一色モノ設定であるアイドル好きと体操要素がリンクした女川掘り下げ回に関しては評価していますし、上記の様なワチャワチャした日常シーンが好きな方もいるでしょうが、そこは良くも悪くも作品の色。自分の感性ではそこが魅力的に映らなかった。

体操をやってない訳ではないし、練習もやってない訳ではない。

ただ、そういったスポ根としての「熱さ」や話としての「面白さ」よりも、中途半端なクセを持ったキャラ同士のかけ算の方が印象強くなってしまう、そんな作品でした。

 

セブンナイツ

『王道要素を活かすも殺すも作品次第』

・何者にもなれぬネモにとっての英雄像の模索

・コミュニケーションの取れぬ英雄との歩み寄り。

ボーイミーツガールの如くヒロインに命を救われ、英雄学校(?)に編入する第1話から、同級生の抱く英雄像の矛盾を突き敵との共闘を通じて親睦を深める第2話、そしてまたしても自身の英雄としての生き方に蝕まれる同級生のピンチをネモが救う第3話。

何も持たぬまま力だけを与えられた主人公が、相手の英雄像への”否定”を通して自身の英雄像、即ち受動的な在り方から固有の生き方を見出していく物語。王道仕立てながらも、否定という今作独自の要素を踏まえつつ、最終的に描きたい事(物語の根幹)が第3話まででしっかりと見えたのが好感でした。こういう良くも悪くも無難な作風は割と好みが分かれるジャンルとは思うのですが、自分の感性ではアリだと思っていた。

ただ、上記の本筋に対して、第5話あたり以降そこから外れたストーリー運びが個人的には目に余ってしまった。今作は回の最後でネモに理想の英雄像を得る為の何かしらの影響を与えて初めて話が締まるというのに、それをする事なくただ小物キャラが無残な死を遂げてしまったり、大してフックのない敵の正体に迫っていく、いわば王道に縋りきった展開が続き、弛れていった。”否定”という今作独自の要素も薄れてしまったのも残念。ピュシス?この世界を守りたい?そんな中身のない王道展開が続く。

ただ第11話にして、これらの弛み展開の意味がようやく分かる。

我々が今まで敵と見なしていたピュシスという黒幕が実は学園内にいて、ネモも又ピュシスだったんだ!という事。ここで初めて第1話~第3話までの内容と一本の線で繋がる。

何も持たぬネモ少年というのは即ち、ピュシスという人成らざる者だったという事。これはそんな彼が仲間や人の温かさを通じて、新しい生き方を見出す物語なんだと。

ただ、それは怪物と人間、どちらの在り方にもなれないという事。怪物として生まれ、人として育ってきたネモがどのような生き方を出すのか。

序盤で仄めかされてた話の全貌が最後の最後で回収される流れ。

最終話ではきちんとその結論は出るし、その他キャラの苦悩も払拭される。

1クール中、頭と尻を以て本題達成された事自体は良かった。

ただ、何度もいうように如何せん中盤が辛かった。個人的には中盤は話として面白い!というよりも、如何にネモを人成らざる者(ピュシス)として学園に周知させるか、黒幕の正体開示を如何に自然に持って行くか、といったどれも第11話に向けての繋ぎの役割だったのかなと。故に今作としての強みが薄かったし、もっというと化身みたいな英雄要素いる!?とも感じた。冒頭と結末だけで十分根幹の部分は果たされていた様な印象。

 

D評価(駄作)

さよなら、私のクラマー

『”君嘘”の皮を被った悪ふざけ』

プレーする環境や同志がどうしても少ない女子サッカーの世知辛さを題材とし、その中でも中学時代で懸命に努力を重ねたキャラクター同士の繋がり(救済)ルーパスの授受を以て描かれる。それが高校生パートで成される第1話~3話の演出。

今作の良かった点は個人的にここだけではないでしょうか...。

それ以降に関しては一切シリアスに振ったキメの回を用意する訳でもなく、ひたすら『君嘘』のコメディ要素の使い所を履き違えまくったおふざけ展開の連続。大して練習する訳でもなく、むしろユニフォーム作りの方に現を抜かし、試合前夜にはろくに睡眠を取らず、試合中に集中を切らすエース。にも関わらず、何故か予選大会を勝ち進んでいくというご都合展開の嵐にうんざり。

結局、シリアスとコメディのバランスが第4話以降は1:9(体感)くらいになってしまい、第1話~第3話で観たかったものが全くといっていい程、観られなかったのが残念。

コメディ=悪ふざけとみなされても否めない作劇となっていた。

また、基本的に才能のある恩田、周防、曽志崎の3人にしか話のスポットが当たらないのもどうかと。チームスポーツでありながらキャプテンにさえ一切合切活躍の場がない。折角第1話~第3話で才能ある者を救済したのにも関わらず、以降はそれを鼻にかけるかの様に、彼女達のみによる3人サッカーが続く。

試合中のピンチも全て気分屋たる恩田の個人技によって何とかなってしまう。そんな驕り展開の何に惹かれるというのか。最早、残りの8人は、才能ある者を引き立たせる為の舞台装置、いやそれ以下の役回りになっていた印象でした。

 

ひげひろ

『生理的に受け付けぬヒロイン像』

感情的なサブタイトルで申し訳ないです。ただ最終話を観終わった直後の率直な感想はこれに尽きてしまった。そう思わせてしまうほどこの物語には家出少女、沙優の成長が十分に描かれていない。故にツッコミ所満載の軽薄な作劇になってしまったのかと。

まず主観ながら、前提として自分がこの作品に求めていた事は、折角犯罪行為を100歩譲って許容出来る、そんな虚構の世界だからこそ成せる(警察に保護して貰うなどの形式的な対応では成せなかった)家出少女の”心”に迫った救済劇。ここの流れは最低限順を追って詰めた上で物語を形成して欲しかった。

そこに基づいた上で綴ると、特に気になったのは今作の本題に取っ掛かるまでの異常な遅さ。沙優が何故家出に至ったのか、それまでにどのような苦悩を味わってきたのか、そんな彼女のバックボーンが序盤~中盤まで若干ほどしか描かれていない。唯一の仄めかしはたった1シーンの吐き気のみ。それ故に、彼女の中で家出した切っ掛けが本当に同情たり得るものなのか、もっといえば本当に被害者立場なのかさえも分からない。その状態で救いはおろか、第1話で吉田が「もっと自分の事を大切にしろ!」と言ったのにも関わらず、別段する必要のない素の状態でも、吉田を前に服を脱ぎ出す彼女の幼さにはイライラさせられる。

経緯が不鮮明な家出をしてから、動機が見えぬまま何故か自分の価値を下げ続けるヒロイン像に対して、冗談でも善意で拾って貰った男性に、その気を起こさせる様な行動を繰り返すのは流石に被害者としての立場に甘んじた子供のよう。この子は更生する気がないんだな....とつくづく感じてしまった。

この状態で後輩、上司視点の恋模様や成長の見られない沙優に何故か芽生えつつある恋心、あの手この手を変えて沙優の過去話を引き延ばしにしようとしていた様ですが、そういう脇道は本筋が遂行されて初めて許される展開。それがされていない状態下で脇道に逸れるのは物語として悠長過ぎる。吉田と沙優のラブコメ展開なぞもってのほか。そんなのやってる暇あるのか?と。

それからというもの、沙優を迎えに来たお兄さんを悪者扱いする流れや母の精神状態など、満を持して描かれた過去回想含め、沙優を露骨に悲劇のヒロインとする勧善懲悪な設定の極端さが個人的にはどうも受け付けなかった。

親友が自殺したのは自分のせいから始まって親にも元凶を疑われ家出。体を売り家を転々としてずっと自分の価値を下げ続けていた所で吉田と出会い、自分を肯定出来るようになっていくという流れ。終わってみればお話としてやりたい事は分かったし、吉田という犯罪者紛いの人物だからこそ成せる同類であるヤリチン男の撃退など良い回もあるのだが、肝心の沙優に本気で入り込む事が出来ず、ラストでも体の関係を以て吉田への告白とする場面からも彼女の本質というのは変わっていないと思ってしまった。

 

 

おさまけ

『中途半端な崩壊三昧』

作画の崩壊、脚本の崩壊、シナリオの崩壊。唯一残った属性としての可愛さもアフレコ頼りでろくに出す事が出来ない。かといってどれかの粗が振り切る事が少ない故に、ネタアニメとしても楽しみ辛い。つまり「面白さ」でいうと今季ぶっちぎりの最下位です。マトモに観られたのは第11話のBパートくらいでしょうか。

後は、身内しか笑えない様な中学生ばりの上滑りした掛け合いのノリと、大人に反抗する行為がひたすらにカッコ良いと勘違いしたガキ臭いキメ(と思われる)のシーン。とても作品らしさとは言い難い痛々しさを醸し出してくる。せめて中高時代に今作に触れられていれば印象も違ったのでしょうが、今観るのは......

また、独白というよりも説明でしかないご丁寧な脚本面も終始問題で。あの時こんな事があって、その時こんな思いで今に至りました←そんなキャラクター達の内面を全部吐露させながら基本的に話が進んでいく。表現が直接的過ぎて、キャラクターとしての繊細さに欠ける。言いたくない事もあっただろうに。

見せ方としても実に単調だったと思います。

 

『世にも奇妙な物語』 ~”21 夏の特別編~ 拙し感想

 さて、今宵もこのお時間がやってきました。

 

   《目次》

 

 

 

あと15秒で死ぬ

この話は正直微妙...でしたね....(申し訳ない)

まず冒頭、薬剤師である主人公が寿命を操る死神の特権を利用し、自分を撃った相手に復讐を試みるという入りの興味の無さ

何もそこに動機や背景といった含みとなる要素を持たせてこず単なるタイトル通りのシチュエーションのみで勝負していたのが観てる側としては退屈でした。

そもそも主人公側が腹いせに相手を殺そうとしたのは、逆恨みで主人公を殺そうとした相手側とやってる事変わらんやん、ブーメランなのでは?とさえ感じてしまいましたし.......

そこから話が進んでも明らかになったのは

主人公は自己保身故に患者の自殺を隠蔽しようとしていた事。

母である患者が娘と無理心中を図ろうとしていた事。

勘違い、仇とはいえ、娘が殺人という犯罪に着手した事。

この話に出てくる主要人物皆に何かしらの後ろめたさや罪を抱えている。故に誰にも入り込めないし、誰も救われないのも無理はないのでは?と引目に感じてしまう。

何とも表面的な後味の悪さと虚無さが残るお話でした。

ただ、この話の興味深かった点としては

「声優」である梶裕貴さんが今回「俳優」として演技をし、

「女優」である吉瀬美智子さんを初めとする他女優さんが声優としての「アフレコ」をしていたという対比構図。

物語としては全く関係無い要素ではありますが、お互いの持ち場が入れ替わった状態で話が進行している光景。

そこに対する違和感には良い意味で笑ってしまいました。

 

 

三途の川アウトレットパーク

冒頭で入る意味深な虫の視点

そして、その虫が入っていった部屋で作業をしている女性の姿。

同じくその部屋で、夫と思われる男性が観戦している野球中継に出てくる、才能に満ちあふれたエース選手

又、三途の川にて来世が虫確定になり嘆いていた男の場面含め、

それらの伏線が尽く回収されるラストシーンには不覚にも涙。

「今まで関わってくれた全ての人々に感謝」←特にこのヒーローインタビューは堪らなかったですね。生まれ変わったとしても、あの時に主人公から受けた恩の記憶は朧気ながらも彼の中に刻み込まれているんだなぁ....と。(泣けてくる)

又、自分のコンプレックスを前向きに捉えさせてくれた事による来世への期待と、前世に犯した過ちへの贖罪、これらを履き違えずに虫としての来世を選んだ主人公には好感。

むしろ前者に関しては、主人公がその選択をした事によって一層メッセージ性を強めたとさえ感じている。だって、主人公にとってのコンプレックスが目つきの悪さでも虫としての姿であっても芽生にとっては関係無いのだから。

だからこそ彼女はラストシーンで、虫になった主人公を虫嫌いだからと殺すのではなく、優しく手で包み込んだのかなと。どちらにせよ前世と来世で主人公は救われたと私は思う。

完璧な落とし所でした。

 

デジャヴ

 摩訶不思議で壮絶な体験を通じた娘と父との歩み寄りに涙。

マジで今回の”世にも”は泣かせる話が多かったですね。

「家庭を顧みる事なく自身の研究に没頭し続けていた父」

このイメージが初めは先行していて、最初は昏睡状態に陥る娘に装置を取り付け、事件の記憶を何度も何度も見せ続けていたのも、他人の気持ちを考慮しない残忍さ故かと思っていた。

だがそれは大きな間違いだった事に気付かされる。

あくまでもそれは娘の記憶から成る父のイメージが記憶の中で見せていた主観に過ぎなかったのだと。

実際は、事件当日の刺激を与える事で娘を昏睡状態から目覚めさせる為だったし、たとえ苦しませる事になると分かっていても、そうする事でしか娘を救う方法が無かったという彼なりの覚悟の表れ。事件当日、娘の誕生日もお祝いする気でいた、という様な冒頭の父親像をひっくり返す逆転展開。それが違和感なく開示されていく。(この時点で私はワンワン泣いてます)

そしてそういった父の真意が娘の中で確信へと変わり、

最後、事件の黒幕と取っ組み合いになった所で、最初は残忍な父の印象が強かった故の記憶に、父の真意にあたる誕生日プレゼントが現れ、娘視点の「記憶」と父視点の「現実世界」、2人で共に黒幕を打ち倒す展開は今作の本筋が強く表現されていたと思う。

又、ラストシーン付近でのお誕生日パーティー

あれは恐らく母在席という記憶の中だからこそ出来たお祝い事だったのではないかと。

これは個人的な解釈ですが、ラストシーンのデジャヴ現象を見る限り恐らく母親は.................

故に、黒幕を倒した後に再び事件当日の記憶が流れたのは、恐らくその中でしかもう父母娘の3人で娘の誕生日を祝ってあげられる事が出来なかったから。そう考えるとあのラストシーンで感じた後味の悪さにも何となく合点がいく。

「記憶世界の利点」とそれを以てしても「取り返せない現実」、その両面をラストで表現する意図があるのかな、という好意的な解釈にしておきたいと思います。(まぁ仮にそうだとしたら、描く順番を逆にして欲しかった気もしますが笑)

 

 

 

成る

 主人公の不祥事やトラウマの記憶を「駒の成り」を用いて掘り返し、煽り散らかしていくAI不惑のプレイングには笑いました。解説者も下ネタド直球の話題をノリノリでぶっこんでいくスタイル。一人で観ていて助かりましたよ本当に笑。

ただ物語において、この対局の勝利条件というのは相手を詰ませる事ではなく、対局者自身が成る事にあったのかなと。

何故AI不惑が対局者の人生を憂いたのかは不明ですが、散々主人公のやらかしをイジり散らかす中にも「朮(オケラ)」という成り駒から始まる改心ストーリー。

最終的に浮気性本当直ったのかこいつ?と思う様なラストでしたし、他2作が感動モノだったというのもあり、もっと笑いに振ってもよろしいのでは?とも感じたが、まぁ面白かったです。

2020春アニメ個人的総括

もくじ

かくしごと B+

今作はタイトルから既に「隠し事」と「書く仕事」という感じで、1つの言葉が二通りの意味合いを表している。こういう多岐的な手法が物語中の随所に落とし込まれていて、要するに話を構成する1つの題材(テーマ)をクスッと笑えるコメディ要素にも、哀愁を漂わせるシリアス展開にもシフトさせられる構成の巧さが印象的でした。

個人的にはこれが今作の最たる面白さに繋がる相乗効果を生んでいたと思う。クスっとする笑いもうるっと来る感動も元を辿れば1つの主軸に帰結するので、ABパートにおけるコメディ展開から感動パートにかけて各パートに共通の意味を見出す事が出来る。そのお陰で余韻が残りやすかったし、時にCパートで漂わせてくる未来編への不穏さがより強いものとして表れてきていた。描かれる元の題材が同じであるからこそ、お互いがお互いのパートでの感じ方の度合いを引き上げてくれていた。そんなイメージ。

ただ序盤こそはその2つの要素が見事に絡み合っていたが、中盤以降ではギャグパートと感動ないしはシリアスパートとの繋がりが序盤ほど感じられず、あくまでも各々単体として機能していた印象。故に比較的失速気味でした。

コメディパート及び感動不穏パート単体でも楽しめない事はないが、前者は段々とネタが固定化されてきて多少新鮮味に欠けてきていたし、後者に関してはどちらかといえ感動というよりも、一体未来では何が起きているのか?という疑問を掻き立てるだけで核心には踏み込まない引きで終わる最終話ありきの仄めかしが中盤以降では多く行われ、あまりその回単体での面白さにはさほど繋がらなかった印象。

ただ逆に言うと、これまでの仄めかしの真相が明らかとなり、笑いとシリアスが再び共存を果たす最終話は良い着地だったと思う。笑って泣ける、今作はこの2要素が絡み合って初めてMAXが味わえる事を痛感するんだなと痛感させられました。

 

はめふら A

今作に関しては主に2つの見方があってそれを行ったり来たりしながら視聴していた。

1つ目は今作の本筋である「破滅フラグ回収」に着目して観る視点。

2つ目は本筋とはやや逸れた異世界日常モノとして観る視点、この2つです。

まず言っておきたいこと。今作は悪役令嬢に転生してしまった主人公がゲームシナリオに定められた破滅フラグを如何に回避していくのか?というメインとなる軸ではあまり楽しめず、むしろそれらが実質全回収された後書き部分の方が魅力的に感じるという何とも珍しい作品だった。無論、上記のA評価は9:1で本筋以外に付けさせて頂きました。

というのも、カタリナが幼少期から破滅フラグを回避しようと動き出す序盤の1話~3話。まだここは2つ目よりも1つ目の見方が中心になるのだが、前者の視点で観た時、カタリナが破滅フラグを回収していく過程に対して「え?そこはなんでそうなるの?」という疑問点が多く観受けられてしまった。ここが1つ自分が今作の向き合い方に苦労したポイント。

ジオルド√にしか登場しないはずのキャラであるカタリナが何故アラン√下の展開(アラン×メアリの婚約話)を聞いて破滅を察知したのか?前世でも未プレイの√な故に情報が少ないから、本来であれば関わらない方が破滅回避の観点からすると最適なはずのニコル√に何故自ら踏み入ってしまうのか?等、本筋だけに注目して視聴するとそことは矛盾するカタリナの行動やゲームシステム上の不確定要素がどうも腑に落ちなかった。

ですが、3話の途中で新しく加わったのが上記に述べた「異世界日常モノ」としての視点。加わった最たる理由としては、幼少期の時点で実質的にカタリナの破滅フラグが全て回収された事にある。故にたとえカタリナ本人が本筋を無視した行動を取っても、自分が食べたい様に食べ、接したいように人と接するカタリナというキャラクター性に純粋に笑う、癒やされる。カタリナを巡って繰り広げられるバチバチ模様の微笑ましさ。破滅する事はもうないのに思案を巡らすカタリナの空回り模様等。

本筋の事を考えなくても良くなり、ほのぼのとした日常風景だけに感情の全てを吐けるようになる。これがマジで大きかった。いつまで経っても破滅フラグ回収に対する疑問点が払拭しきれない序盤と比べて格段に観やすくなったと思う。

その中でカタリナのメイドさんやマリアの過去を掘り下げながら、カタリナとの絆をより強固なものにしていくほんわかepi.も良かった。

ただ終盤で再び破滅フラグ要素を追加してきた事。

また不明点に気を張らないといけないのかと思う反面、期待していた所もあった。特に10話で令嬢達がカタリナの悪事を暴きに来る展開。初めは破滅フラグが既に回収されているという現状を加味して、どうせそんなのただのでっちあげだろ?と緊迫感は一切なかったが、後に彼女達が何者かに操られていたのでは?という流れになってからは、もしや今までカタリナが本来のゲームシナリオをねじ曲げてきた事の弊害(フリ)がここに来て回収され始めるか?という今までのフリ回収に胸を躍らせる本筋面の面白さが期待出来たが、作中のキャラに全て収まってしまいスケールダウン。どうせカタリナ包囲網に加わるんでしょ?とどうしても肩透かし感が否めなかった。

また7話で主人公視点が入れ替わった事によって、ここから今までカタリナの知らなかった様な新たな破滅フラグを回収していくという面白そうな展開も見込めたのに速攻記憶をなくすのかと....。あっちゃん=ソフィア、そのあっちゃんとカタリナが再会を果たす11話に向けての布石だったのかもしれないが、8話のようなOVAを挟む尺に余裕があるのなら、もっと本筋面で面白くする事も出来たのではないかなと。

全体を通して終始本筋<OVAという構図を覆せなかった印象。それが悪い訳ではないが、2期まで続くからにはやはりOVAだけでは物足りないものがある。しかも本筋の部分をもっと盛り上がらせる事が出来たはずなのに、そこより日常モノとしての色を強く意識しすぎたのは2期をやるにおいてあまりにも取っ掛かりが足りない様に思えてしまう。更に1期の最終話でカタリナ自身が友情ENDだと認識した以上、もう彼女が最早存在しない破滅フラグを回収しようと空回りし続けるという1つのコメディ要素が消えている訳で。基盤の部分の面白い所が1つ無くなった状態で2期はスタートする事になる。

ただ、まだ1期終了時点ではまだカタリナの中であっちゃん=ソフィアというのを認識していない。嘗て分かれ離れになった親友と再会させる為にも、そこを本筋を捉える事は出来るが、1期を超えてくる気配が現状だとないのが正直な所。

 

波よ聞いてくれ A

アニメーションというよりかは聴覚で十二分に楽しめる作品。

ニッチなものの例え方1つとっても笑える。そこ突くか!と思うばかりの独特なワードセンスや漫才のようにテンポ良く流れるボケツッコミの応酬ばりの掛け合いを聞いてるだけで気づけば毎話が終了している感覚(マジで)。また忠也を中心に動くトレンディドラマ展開筆頭に揺れ動く人間ドラマを見せられながらも正直に思い、喋り、行動するミナレの生き様から溢れる人間臭さ。それらがラジオの音声、波となって少し皮肉愚痴交じりに解き放たれるのが大変気持ちが良かった。

 

球詠 B   

まず全体的に作画が宜しくない。1話時点で大腿部に魅力を感じなくはなかったが、第1印象の入りで純粋にキャラを可愛いと思えるかと言われれば正直に言って否。それほど作画面には期待出来なかったし、更に試合では手描きだけではなく所々3DCGに差し替えた作画が加わる事によって違和感が半端ない。3DCGで描かれた人物の表情が固まって動きが無くなり、選手の感情が画だけでは伝わりずらくなったり、本来なら激しいシーンになるはずのタッチアウトの場面が予定調和のような味気ないものになってしまったりと特に弊害が目立った。

ただストーリー面ではきらら作品らしい良さがあったので視聴継続をした次第。

特に序盤と終盤。

嘗てのチームメイトからの圧力で変化球を封印してきた詠ちゃんが幼馴染みとの再会によってトラウマを払拭していく様や活動停止の日々の中でもう一度この場で野球をしたいというキャプテンの思いがバッティング描写に表れたりと。

ちゃんと下地としてキャラクター1人1人の背景とそれに伴う野球への思いを掘り下げていくクール序盤の丁寧な展開運びには素直に好感が持てた。昔からの憧れ1つで全国レベルの剣道の腕を捨てて野球部に入ってくるキャラがいたり、当時メンバーも少なく弱小だった新越谷に強打者が入部する事になる理由付けの所などは話の取っ掛かりが薄いと感じる所もあったが、違和感を覚える程あり得ない流れではなかったしそこよりもちゃんとキャラに寄り添って描く構成の素晴らしさが勝っていたから、そこは大した問題にはならなかった。

このようにキャラクターに焦点が当たった時のストーリー面の面白さは今季トップレベルだったが、肝心の野球に関する展開である中盤は微妙だった。

具体的には5話からの合宿回。

今まで仲間集めが中心だった序盤から、どのように今後の試合に勝っていくか、彼女達が如何に成長を遂げていくかという野球アニメにここからシフトしていく予定だったのだが、正直ここの合宿展開を描く意味がさほど感じられなかった。合宿初日に詠ちゃんの他に投手を育成する為新たに補欠投手が抜擢される。個人的にはそれを受けてから如何に投手としての成長が描かれるかがこの合宿回における1つのテーマだと思ったのに、大してそこの練習動向だとか新たに選ばれた投手側の心情があまり映し出されずに淡々と合宿を終えてしまった。故に観応えに欠けてしまった次第。

故にそこから試合になっても、そもそも選手達の成長を感じられてない訳だから1つ1つのプレーに対して盛り上がる事が出来ない。なんで急にバントが巧くなってるの?とかという恐らく合宿で培った成果だとは思う。ただそこに対して視聴者がついていけていない。此方側のリアクションを伴わないで試合が動いていた印象。芳野マネの采配のすごさにしか注目出来なかった。選手側には一切感情を持てなかったのが残念でした。

唯一意義があったとすればやはり芳野マネと希さんとの掛け合い。行きすぎた努力をし続けるに至る希さんの過去のトラウマを芳野マネが優しくほぐし、メンタル面の傷が完治しきっていない彼女をあえて4番に指名することで成長を促す展開は良かった。ここがフリとなって最終話で希さんから芳野マネに宛てた特大ホームランに感動を覚えられた訳で。布石として合宿に落とし込むそれだけの理由はあったかなと思います。

 

邪神ちゃんドロップキック' A+

日常系なのに流血必至で此方としては可哀想と思えてしまうグロシーンとのギャップについ1話切りを考えた1期冒頭とは一転、2話以降でゆりねちゃんにぶちのめされるに相当する邪神ちゃんのクズっぷりが露呈されてからは、そのグロシーンに正当性が促され、ぶちのめされるまでの流れが笑えるギャグとして見なせるようになり終始楽しめるようになった邪神ちゃんドロップキックの1期。

2期でも同様に楽しめるかと思いきや、2期冒頭でぴのを初めとする新キャラが追加。

この流れに最初は疑念を抱いた。何故なら上記にも述べた通り今作の面白さの中枢にいるのは紛れもなく邪神ちゃんだからだ。彼女が何かしでかして最終的にゆりねちゃんにしばかれる。この一連の流れだったり、とにかく不憫なぺこらの動向だったりと1期時点の主要キャラのやり取りで十分今作の面白さは担保されていた。

そこに新キャラ等の追加と来た。しかも少しぽぽろんとキャラがかぶっていると。

個人的な思考としては彼女達に尺が割かれる事によって、自然と邪神ちゃんの出番が減って、1期のような安定性が損なわれるのではないか。特に2話辺りからトーンダウンが危ぶまれたが、まっっっっっっっっっったくの杞憂でしたね。

3話からギャグ然りキャラ達による掛け合いの微笑ましさ然り1期を超える勢いで面白かった。ジョイマンや歴代ドラマ作品のパロディネタや登場キャラが今作を制作しているスタッフ名に触れたりするメタ展開は勿論だが、邪神ちゃんにストレートをかましたり、彼女をハブるまでのテンポだったり(この素早い切り替わりが最高に笑える)、妖怪展における邪神ちゃんいじり等、1期よりもゆりねちゃんサイドから邪神ちゃんへのアプローチが増えてきて、単純に笑える要素が増えたのは勿論あるが、個人的にはただ今作に対し笑えるか否かという冷めた視点と観るのではなく、1期から観てきて段々と作品への愛着が芽生えた事が面白さが増した一番大きな要因なのかなと感じている。

具体的にはまずビジュアル的にキャラクター自体が本当に可愛く見えてきたのが1つ。

これは個人的な感触ですし1期でも同様の手法を取っているのかもしれないが、目を文字通りの点にして描いたり、顔のパーツ自体を多少崩して描いたりする等、演出でキャラを可愛く見せる画がいくつも見受けられて、率直に可愛ええええと感じた次第。

そしてもう一つは、キャラにギャップ性を加えて感動に持って行く展開。

これがズルイ。従来クズキャラの印象が強い邪神ちゃんのイメージがガラッと変わる回を入れてきたり、いつもはATMと呼び金を媚びるメドゥーサとの友情回がギャグの中にしれっと入ってきて1期からの積み重ねで、キャラ達そのものの関係性が尊く感じられ、仮にギャグに笑えない時でも彼女達の掛け合いを眺めているだけで十分面白いというまさにきららの最終形態になってしまったのがもう最高です。

笑える要素も豊富、おまけにキャラへの愛着も湧いてしまった。

こうなった日常系作品はもう最高と呼びざるを得ませんよ。ありがとう。

 

イエスタデイをうたって B+

ご都合展開一切なし。本当にリアルな人間像がそこにはありました。

何が自分の悪い所なのかも分かってても変われない。これが現実。

いや何が悪いのか分かってるから変わろうとしなよ、そんな全うな視聴者側の指摘など通用しない。なぜならこれがリアルな人間の姿だから。共感する節はあった。

ただこの等身大の人間像を主要キャラにしたとき、やはりストーリーとしての動きはなくなるのは否めない。勿論、そういう人間としてのリアルさが一貫されて描かれている事、そしてそこに共感を覚える自分がいることも。

ただそのリアルさによる膠着状態が1クールの大半を占めてしまうと、どこかで「流石に展開動いてくれないかな」と視聴者側の自分が出てきてしまう事が中盤以降は多々あった。

故にどこまでキャラに感情移入が出来るか、共感する自分と視聴者視点の自分との戦いでもあった。

そういう意味では自分は今作を100で楽しむ事は出来なかったと感じている。

作画面の透明度や繊細さが素晴らしいのは分かる。

ただこの「イエスタデイをうたって」という作品に対して自分が感じる面白さには直結しなかったのが正直な感想。強いて言えば交差点での陸生と晴の場面。

そこ以外は基本的に作画単体ですごいという印象で、ストーリーの流れを汲んで作画面の細かさが意味を持ったりはしなかった。故に動画工房さん凄いとは思ったが、「イエスタデイをうたって」という作品の評価に繋がることはあまり無かった。

その他はTwitter見て初めて気づいたものが多く、視聴中に感化されはしなかった。

 

本好きの下剋上 第2クール A+

終始ド安定。且つ不動のトップクラスの走りを今季も見せてくれた。

今作で一番印象的なのがストーリー構成の緻密さ。これを随所で感じた。

相変わらず前フリの差し込みから今作の丁寧さが身に沁みる。

物語中において何か事態が動く時。その理由がしっかりしていて、その納得材料として事前に敷いた布石(前振り)が最終的に意味を持って効いてくるという流れがもう完璧だったなと思う。

1つ例を挙げるとするならば16話で傍仕えのフランがマインを主としてみなすようになる転換。

新官長

確かに17話18話でギルとデリアがマインを主としてみなすまでの流れが従来における今作のテンポからすると早いという声もあるでしょうが、その中でも孤児院の存在や寵愛を求める子供ながらの感情を交える等ちゃんと彼等に寄り添った構成で、彼等の改心に対し納得出来る材料は揃っていたと自分は思う。

 

LISTENNERS-リスナーズ- 

前季における「はてなイリュージョン」とほぼ同着の作品。

序盤こそは、田舎から憧れの舞台を夢見る少年が突然現れた少女の無くした記憶を探す旅に出る、という王道ながらも本筋がしっかりしていて十分今後に期待が出来る真っ当な開幕だった。

だが2話早々で、今作の初期設定としてあげていたプレイヤーvsミミナシという構図をぶち壊す。今までミミナシが人間を襲い、その中でプレイヤーという存在がミミナシに仇なすという立ち位置だったのに、突如ミミナシとプレイヤーとが手を組んだ敵が主人公達を襲うという意味の分からない展開をおみまい。

これがある程度話が進み、プレイヤーvsミミナシという因縁についてややミミナシの正体にある程度視聴者側に理解が進んだ上でのクライマックスでこういうメタ展開を持ってくるならまだ分かる。

だが、まだ2話時点では今作がどういう世界観で主人公達がこれから何をしていくのかという大まかな物語の方向性を示す段階にあると個人的には感じている。

故に当然のことながら、この時点でプレイヤーとミミナシが何故戦っているのかという初期構図の事さえあまり分かっていない事が多いし、序盤はこの構図のままで話を展開させていきながら上記で述べた様にそれぞれの因縁やミミナシの正体などに迫っていった方がストーリーとしてもわかりやすいと思うのに、早速終盤で描かれるような展開を放り込んでくるから此方側からすると?マークに?マークしか浮かんでこない。

ここから今作への疑念が生まれその後もとにかくお話のつくりがなっていなかった。

他にも、物語の流れを説明じみた台詞のみで消化させている事。昔はこんな事があってこういう出来事があってその時自分はこんな感情だった、という風に過去形で描くから事情こそは分かるがあまり真に迫ってこないというか没入にまで至れない。

まだ理由がマシ。肝心の理由付けさえあざなりになっている回もある。

何故偉い地位にいるキャラが主人公達に心を動かし、任務を託したのか?

結局ミミナシとはどのような存在か?

理性あるミミナシ(この時点で意味分からん)を突如凶暴化させる光の正体は?等

こういう物語の根幹にも関わるような設定に対する説明や、物語を転換させるに相当するだけの理由付けがマジで取って付けたかのような雑さ加減。

一番酷かったのは、キャラクターを不要な展開を促す為、無慈悲に死なせたこと。

7話で初めて制作陣に嫌悪感を抱いた。新鮮な体験でした。

ストーリーは致命的。残った音楽面も個人的にはイマイチだった。

一応今作は音楽アニメの一面も持ち合わせているから、昨年の春アニメである『キャロル&チューズデイ』の様な音楽センスがあるのであればストーリーにも目を瞑れたかもしれないが、一切ハマった曲が自分の場合なかった。もう庇いきれません。

 

神之塔 

全体的にキャラ背景の掘り下げが足りないせいで観応えに欠けていたかなと。

「何故塔に登りたいのか」←今作の本筋は非常に単純明快な故に、ここの動機の部分を各キャラで如何に深く掘り下げられるかに今作の面白さが決まってくると感じている。背景を描いてさえすれば、そのキャラが何らかの行動を起こした時に、味わい方が変わってくる。それらがぶつかり合う事で駆け引きが生まれ、作品としての面白さに変わってくると思っていたし、そういうのを今作には期待していた。

ただこの作品は主人公以外その動機の部分が一向に描かれない。何故塔の頂上を目指してるかが分からないので、試験に苦悶する試験者の様子を観て共感することが出来ず、あなんか困ってるなー程度の一歩引いた状態で視聴していたのが序盤~中盤。

しかもその試験内容自体も単に水の壁を通り抜ける試験だったり、複数ある扉の中から正解の扉をヒント無しで選ぶ試験だったりと基本的にひねりがなくて味気ない。

故に今作のどういう所を楽しんでいたかといえばストーリーよりかは、ワニキャラで感情ダダ漏れのラークさんの動向だったり、殺人武術(笑)の使い手ながら弱キャラのシビスさんに笑ったりとキャラアニメの側面が非常に強かった。

だが回が進んでいくにつれて、少しずつ主人公以外のキャラから塔に登る理由が過去回想を交えながら明らかになっていって序盤に望んでいた流れに期待。

そして期待通り、それらの想いがぶつかりあって交錯する第9話はようやく今作の強みが活かされた気がします。

ただそこ止まりだったかなと。

試験者同士でいざこざしていたのが、試験官から敵が現れた事によって試験者達が団結してしまったのが残念。

デスゲームとしてはやはり参加者同士で駆け引きをして争いあってナンボ。

そこから絆が生まれるならいいが、そもそも今作の登場人物は基本的に良い人が多すぎるが故に、そこまで争いという争いにならない。しかも塔に至れるのは1人だけ、とか争いを促す設定もないから、友情が芽生えるまでの過程が生ぬるく感じてしまった。

ここもデスゲーム作品として1つ残念な所でした。

繰り返しになりますが、今作は塔に登る各々のキャラクターの動機、そこに至る背景が掘り下げられれば掘り下げられるほど、面白くなるという方程式があると思っている。

最終話が比較的盛り上がったのは、今まで不透明だったラヘルの塔に懸ける想いは描かれたから。ここが描かれてさえいれば陳腐な試験内容だろうと関係ない。

もし2期が描かれるのであれば、その部分を重点的に描ききって欲しい所です。

 

アルテ 

設定や世界観にはあまり斬新な特質すべき所や爆発こそなかったが、シナリオ面が安定して秀逸。

これは元の原作の良さもあるのかもしれないが、やはり今作のシリーズ構成と脚本を担当された吉田玲子さんの手腕が光っていたと思う。

貴族、女性というマイナス面に立ち向かうアルテの気概←主軸

その気概を嘗てのレオ自身に投影させ、アルテと親方の共通項を見出した第1話の転換。

貴族、女性というマイナスを気にせず向けた善意。

これをきっかけに優しさと本当に本人の事を考えた思い遣りを履き違えていたアンジェロの気づきに繋げた第2話。

売婦というマイナスでも、その職の為に捧げた努力は何より尊いということを示した第4話。

男尊女卑をベースとしたマイナス面をプラスへと好転させるストーリーの転換のさせ方(取っ掛かりの設置)がとにかく巧かった。

その中で女性、貴族という在り方を認め、それらを強みとして画家を目指すアルテ自身の成長に繋げる物語の着地点も良かったと思います。

 

ビーエヌエー B+

今作を視聴するにあたって感情と理性。どちらが最も大きく働くか。

ここ次第で評価が大きく揺れ動く、そんな作品でした。

個人的には前者パターンの展開は今クール屈指の良回となり。後者パターンの展開は凡作に落ち着いてしまいました。平均してB+が妥当かなと。

今作のテーマとして取り上げられていたのは獣人と人間の対立構図がどうとか、獣人内における差別構図だとか割と重めなテーマ。

これを如何に調理するか、という所に今作の面白さが左右されたのかなと。

何故急にみちるの足が速くなり豪腕になったのか。どういう風にして強豪チームに勝っていったのかが不明な所がある。そういう理性から来る疑問を大幅にかき消すアクション作画の振り切り具合。弱小野球チームからのし上がっていく熱い下剋上ストーリー、違法賭博が横行する業界に抗って監督の青春を取り戻すオチが最高に面白いし清々しい!今作はこのように理性よりも感情で味わう部分が大半な構成で仕上げるのがベストだった様に思う。現に今作で最も評判が良いのは紛れもなく5話でしょう。

そこと最終話以外は、基本的に理性の部分が先に機能してくるストーリー運び。

決してこの流れは別に悪くはないのですが、如何せんオチに相当する部分が無く爽快というよりかは多少後味の悪さが残るラストが多く(テーマ的にしょうがないとは思いまますが...)、その中でみちるの獣人化に関する謎を散りばめたりする等、ラストのカタルシスありきの展開も観受けられ、単発であれだけの爆発力があった5話を観てしまったというのもあり、理性パート単体だけでは物足りなさがあったというのが正直な印象。

また、個人的に気になったのは4話でニーナに酷い目を遭わせた人間が故意だったのか誤りだったのかという所、そういう人間サイドの心情を一面のみでしか掘り下げ切れていないのもどうなのかなと。あくまでも人間は獣人を迫害するという一括りとしてしか捉えられていないということも描き方として少し足りないと感じてしまった次第。

 

 

かぐや様は告らせたい? A

抜群の安定感と笑いを提供。

1期に引き続き会長とかぐやとのシーソーゲーム然り、藤原書記持ち込みゲーム展開然り等、しょうもない事を面白くさせるのが相変わらず巧いなあと。

個人的には前振りからオチまでの高低差によるコメディが今作で特に好きで、具体的には偉大な四宮グループの説明から始まって如何にかぐやが優れた人物なのかとか、その医者が世界の3選に入っている云々という解説を織り交ぜて如何に名医であるかを事前に解説してフリを効かせてから、常人を下回るしょうもないオチに持って行くこの落差。最早王道とも言える流れがまあ笑える訳です。8話の「かぐや様は診られたい」なんかはその手法を用いた代表的なギャグ回で今季で最も笑わせて頂きました。

また1話毎の構成面でも、1期の様にをほぼ1話完結でブツ切りにするのではなく、回毎の内容に繋がりを持たせて2期では描かれてた事で、ストーリー性が追加されたのも面白さに繋がっていたと思う。Aパートで仄めかされたかぐや姫の末路を反面教師として、会長の任期満了に抗っていく15話のCパートまでにかけての流れは恐らく前期には無かった今作の良さが窺えていたと思う。

 

グレイプニル A

序盤こそはただのフェチアニメ。ヒロインに弱みを握られて主人公が言葉責めを受けるシチュだったり、気を失っているヒロインを、主人公が真面目ぶりながらもスカートを脱がそうとするシーン等、本能的にそそららえる展開が多かった。加えてスピード感ある作画が純粋に楽しめる回もあった。

だがこれらの要素は今作においてはあくまで付随的なもの。何かもう少し作品に没入させてくれる何かが欲しかったというのが序盤の印象。

その何かの部分を見事に埋めてくれたのが中盤。故に評価はばく上がり。

今まで登場してきた化け物がなぜ故にその姿となったのか。まだ表面的な所ではあるが、その化け物化を促した宇宙人と名乗る人物の目的。何よりその化け物達の内に秘めている「変身願望」。このワード提示で作品の主軸が明かされたことで、果たして中身を必要とする修一の変身願望とは何か。そしてこれから現れる化け物の変身願望とは何か。という作品の見方が鮮明になり、エロやアクション以外の視野が広がってしっかりとストーリーとして面白くなっていった気がする。

5話なんかは特にそう。ただ異形の姿のまま暴れ回っているのではなく、各々が抱く信念に沿った変身願望を持っているから、頭がイカれているとしても、相手側の根本となる思いは理解出来るし、理解出来るからこそ人を殺す以外の方法で奴等の欲求が満たされる事で、仮に戦いの決着が片方の死をもたなくとも納得出来る。故に全く安っぽくならないというデスゲーム作品本来の強み=緊迫感をを味わえた。

「変身願望」というキーワードが以前に明かされた事によって、敵の心が透ける様になったのが面白く感じた要因なのかなと。出来れば人を殺したくない修一と殺す意思の元戦うクレア間のの意識のせめぎあいも観応えがあった。こういうストーリーという根幹がしっかり機能していると、そこに付随して迫力ある作画面も評価に繋がる。

また7話のシナリオも個人的に一級品。他人の為に動く2人だからこそ、互いが互いを補完しあって真の強さを成すという展開。同時に修一と吉岡さんの完全さ。今までタッグを組んできた修一とクレアの不完全さをも示すという流れ。5話同様、各々の感情の動きがバトルに影響を及ぼすストーリー運びは今作屈指で唸らされた。

だが、ここまでストーリーを真面目に描いてきたのが仇となったのか、今作の主軸でもある修一の変身願望を紐解くにあたり、そこにいつかは繋がってくるであろう途方もない過去回想を最終話目前で描くという見切り発車展開。

案の定、不明点は一切解決されず。イマイチ煮え切らない構成で幕を下ろしてしまったという点でこれまでせっかく積み重ねてきたストーリー面の面白さが終盤に関しては無くなってしまった印象。今までは「変身願望」というキーワード提示の元、そこに関わる各人物同士の化学反応が最たる面白さだったのに、終盤に関しては、キャラが何を考えて何を思ってそういう行動を取ったのかという動機付けが個人的には足りなかった様に思える。特にエレナの再度に渡る修一の記憶封じには納得が出来なかった。

やはりこういう真面目な能力系デスゲームものを1クールに収めようとすると雑なおれたたエンドになってしまう事は避けられないのだろうか。これでは同じジャンルでありながらツッコミ所ありきのギャグテイストで仕上げてきた「ダーウィンズゲーム」のシナリオ構成が正解だと言われているようなものではないか。

今作に興味を持つきっかけに値する骨の部分。そこからの肉付けは見事だったが、終盤にかけてその肉が腐っていって、骨のみが最終的に残る。そんな作品でした。

 

 

 

 

 

エヴァファンの卒業式『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』垂れ流し雑感

 

まず、大きな声で言っておきたいのは、今作を全くの別ルートから始めるのではなく、「破」「Q」の延長線上から物語を再開させ、綺麗に描ききった事。誰の目から観ても面白いであろう「破」からの 、考察ありきでないと楽しめない「Q」を蛇足にさせなかった事。

何よりこれが一番嬉しかった。

「破」におけるシンジ君の決断が「Q」で尽く覆されたあの虚無感が報われた気がしました。

且つ、今まで考察でしか埋められなかった余白の部分を映し出してくれたお陰でキャラクターについても理解が深まり、一層落とし所に納得出来た点も観易かった。

また、ゲンドウは如何にして計画を遂行しようとしたのか。

そしてシンジ君は如何にして父の野望を食い止めたのか。

正直、人類補完計画云々のマクロ的な過程に関しては未だによく分かっていない。

ただそういう物事の因果が見えなくても、そういう行動に至った切っ掛け、トリガーとなるキャラ心情は鮮明に分かる(少し分かり辛い表現ですが...)のも良かった。

先ほどの2人で説明すると

ゲンドウ→亡き妻への想い、その裏側にあった息子への後ろめたさ等

シンジ→貴方がエヴァに乗った事で奪われた命と同時に救われた命がある。それを14年後の友の言葉や恩人と仇の間で揺れるトウジ妹の葛藤、様々な罪を背負うミサトの苦悩を知る事で独りよがりの自分から脱却していく、

といった所でしょうか

壮大な人類補完計画とやらの云々かんぬんよりも、そこに纏わる動機や気持ちといったキャラ描写のバックボーンが明かされた事による結果への納得感

それを各々の主要キャラにスポットを当て、描いてくれた。

個人的にはこれだけで十分。

最終章としては分かり易く、実に共感し易いラストだったと思う。

「狭く浅く、から広く深く。」 五等分の花嫁∬第6話感想

・感想

何で今作は良回と凡回の開きがこんなに大きいんですかと。

率直に、「七つのさよなら 第三章」第4話に続く良回でした。

前話でもこのようなキャラ掘りを兼ねた個人ルートは描かれてはいたのですが、その時よりもずっと濃密で、全体的な話の流れと複数のヒロインの心情の動きとをリンクさせた秀逸な展開運び、「全員が先生で全員が生徒である事という新しい勉強方針が各ヒロインへ多岐に渡り作用していく様が大変響く回でした。

ここではメモ程度に、今話における彼女達の動向を軽くまとめてみようかなと思います。ここの部分が足りてない!等のご意見がありましたら、ご気軽にコメントで教えて頂ければ嬉しいです!

 

・各ヒロインの動向(個人的な解釈も含まれる)

~五樹~

各月命日にお墓へ赴くくらい母親への想い入れがあるという取っ掛かり。

→私は母になりたい、だから一番母に馴染みが深いであろう先生になりたいんだ!という従来の五樹の考え。(家の中でしか母を見たことが無かっただけあって割と曖昧)

だが、彼女の元教え子との掛け合いの中で...

→母親になるだけなら先生以外にも様々な選択肢がある。

→その中で先生という職を選ぶ理由は何か?

→この投げかけに対し全員が生徒で全員が先生である事という勉強方針をとる事で、教える事の喜びを五樹自らで実感する落とし所。(母親になる複数の道の中から確固たる夢を自身の手で見出したという前進に繋がっている。)

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「お父さんとの約束もありますが、私の夢の為、まずはこの試験を通って進級しないことには話になりません」

 

四葉

嘗て、自分の落第が原因で五つ子全員が転校に至ってしまった事の罪悪感。

→だが「国語」という得意科目の見出しによって全員が先生になれる事に気付く。

→足を引っ張る側から、一つでも皆に教える側になれた事で心持ちの変化に繋がる。

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「今まで失敗続きだったけど、勉強の神様!どうか今だけは私に力を貸して下さい!あんなに皆で頑張ったんだから!」

 

~三玖&一花

一花:身を引く覚悟を固めようとするのとは裏腹に募る恋心

一花の恋心に気付いてる(?)

三玖:料理下手な中、風太郎の為懸命にチョコを試作し続ける

 

→この構図の中で試験前、三玖の宣戦布告という名の優しさが一花を”恋路”という三玖自身と同じ土俵に立たせる。

三玖:「この試験で目指すのは赤点回避だけじゃない。他の姉妹にも負けない。あの日そう決めたんだ。」

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→対し、風太郎への気持ちの強さを試験の成績を以て三玖に意思表示した一花。

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「...やった。」

三玖の告白を遮るかの様な一花の対抗意識が窺える。

「一番」という言葉を巡る勉強と恋心の掛け合わせが◎

 

 

~二乃~

「ありえない...ありえないわ...。私がアイツの事....」

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試験の場面でのモノローグ。

風太郎に感じているドキドキが、嘗ての想い人で同一人物である金太郎君への面影によるものだと思っていたが、それが勘違いと徐々に実感し始めた証か。”金太郎君”への初恋が、”風太郎”そのものに移るまでの二乃√もしっかり確保されていた様に思う。

「”女児アニメだから”で割り切りたくはない今作の美点」 プリパラ無印 第29話感想

 

腑抜けたファンシーモードの「自分」から脱却する為に頑張る。

(第1クール目で成した成長)

          ⇓    

今まで「支えてくれた人達」の応援に応える為に頑張る。

(今話で見出した新しい志)

この2段階のモチベの変化こそ、そふぃちゃんパートの全貌。

 

 つまり....

無印第12話で”前者”の本筋が達成出来た。

→その恩返しとして”後者”の目的意識が芽生える流れなのかなと

 

てっきり今話は大神田校長主導のギャグ回だと思っていた。

そして、正直1クール目(1段階目の成長のみ)でそふぃちゃんの担当パートは終わりだと思っていた。だがその延長線上に秘められたそふぃちゃんの原動力の変化が丁寧に描かれたお話。

 

また、その変化を映し出す際、“今まで周りに頼り切りだった姿からそふぃちゃんは本当に脱却したんだ!“という第1クール目における本筋の達成を再度印象付ける為に、親衛隊から差し入れとして渡されたレッドフラッシュ(即ち梅干し)をそふぃちゃん自らの意思で拒むという行動を以て証明する過程の抜け目の無さ。仮に1クールの内容を覚えていなくても彼女の成長に納得出来る構成。第12話以来にそふぃちゃんパートを描く時間差を考慮した(と思われる)地に足をつけたシフトのさせ方が良かった。

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また、Aパートでは納豆を伸ばす事にも苦戦していたという成長前の部分を極端に描いていたからこそ、ラストの場面でそふぃちゃんがタイヤを少しでも動かせた事、たった少しでもその成果の捉え方がビフォーと照らし合わせる事で、より肯定的に捉えられる。加えて、体力が人一倍無い彼女をあそこまで突き動かすくらいファン達への思い入れがあったんだという彼女の熱意を示す役割もあるフリの演出だったのかなと。

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そして個人的にグッと来たのがそふぃちゃんの頑張りに対する他2人の立ち位置。奮闘するそふぃちゃんを後ろから励ましながら応援するこの両間の距離感がマジで良い。

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この構図は、第1クールでのそふぃちゃん回から一貫されてる。

(↑↑ 鳥かごんとこは個人的に今作屈指の良演出)

脱力しきったファンシーモードの時に、色々な人達に迷惑をかけてしまったからこそ、今度は自分の力だけで困難を打破したい。

→そういうそふぃちゃんの向上心を知ってるが故に、露骨に手を差し伸べずに傍から応援しつつ見守る。

→それでいてグループ単位の障害は皆で乗り越える対宝塚トップスター戦。

仲間想い故のメリハリ付け。

まさに第1クールの内容を踏まえたブレない3人の友情の形を見せてくれた。
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最後に。(少々自分語りになってしまう事をご容赦ください...)

「いやいや第12話で一度終わらせたものを今更掘り下げられても...」

「女児アニメという前提だから許せてしまう展開では?」

と言われてしまえば確かにそれまで。

だけど、その一言二言で私は今作を見限りたくはない。

確かに幼い年齢層に向けた作風に対する寛容さはある程度必要です。ただ、初見時に感じた一時の先入観を抜きにして観れば、それだけ掴み取れる物語としての魅力があるんだと改めて気付かせてくれた。

確かにベタで大した事ない事を大袈裟に見せる取っ掛かりや大神田校長等のキャラデザに対するこっ恥ずかしさはあります(笑)、ただそこを受け容れた先にはちゃんとその話の本筋として毎話毎話描こうとしているキャラクターの変化や成長といった掴み所、掘り下げ甲斐があると自分は思っています。

むしろ自分は作画とか演出の部分よりも(勿論そこも大事ですが)、何よりストーリー面のフリ回収や地味な理屈付けの部分を面白さの基準にしてる部分があるので、その趣向に毎話一貫して本筋(テーマ)を埋め込んでくる今作の脚本がハマっているのかなとも笑

幸か幸かアニメ沼にハマって早2年。良くも悪くも目が肥えてきたが故に、3話まで様子を見ずにすぐ表面的に「観るのがキツい」「悪い所にばかり目が行ってしまう」等と決めつけていたひねくれた視点に喝を入れられた様な気分。ジャンルに対するチューニングの先に、唸られる面白味が今作の場合にはあると女児アニメ新米ながらに感じました。

Twitterにて無印の各話感想は今後共続けさせて頂きます。

 

 

世にも奇妙な物語~”20 秋の特別編~ 軽く感想でも。

少し遅れましたが今回もやっていきます。

前回の特別編から割と早めのスパンで今放送を迎え大変嬉しい限りです!

それでは張り切って参りましょう!

 

今回のラインナップ↓↓

 

コインランドリー

都合良く無から有は成し得ない。

お金も、最初に念じたビールも恐らく誰かの所から勝手に奪い、洗濯機(乾燥機?)に転送されたものなのだろう。それが人になった場合が特に問題でした。

あの女性達にも恋人が、何より家族がいたはず。なのに突然理不尽に転送させられ、主人公の好みの女性像に思考を歪められた上にたった一日の寿命に縮めてしまった。この罪は大きいですよ...

差し出しを伴わずに得る幸せは誰かの不幸へと直結する。大変極端な事例ではありますが教訓は得られました。前回の「魔人のランプ」を思いださせる様な回でした。

 

タテモトマサコ

コードギアス』要素を随所で感じ少し笑ってしまいました。

まぁもし彼女が意図せぬ得てしまった言霊の力によって、思った様にコミュニケーションが取れず、人間関係に苦しみ苛んでいるという被害者立場の描きが強かったら此方側としても彼女に情の入れようはあったものの、その力を逆に利用して横領という犯罪行為を隠蔽していた、にも関わらず平穏に過ごしたいという自分にとって都合の良い理由を棚に上げて何も関係のない人々を単なる私情で手に掛けるのは流石に我儘が過ぎるし能力の乱用。故にこの物語の落とし所を、冒頭で彼氏さんを殺された主人公の復讐劇として締めた所は個人的に納得しています。

また、「楽しさは無限大。あなたの思いを自由自在に。」

まるでタテモトマサコの力を象徴するかの様な会社の標語の映し出しが一番怖かったですね。同時に、彼女が一転窮地に追い込まれる最終局面の際にもバックに映されていた標語。それをあえてぼやかせる事で今までの安寧が崩れていく彼女の姿をより強調させるかのような演出は個人的に巧かった所と思います。

 

イマジナリーフレンド

こういう話弱いんですよぉぉぉぉぉ(思わず泣きました)

亡くなった後でも妹の事をずっと気にし守っていた事、半ばお母さんの不注意で自分が亡くなったとしても、ずっと母手一つで育ててくれた親の苦労を理解した上で今までお金の無駄遣いをしない様にしてくれていた事。そのお姉ちゃんの優しさに素直に感涙です。こういうのを毎回やってくるからホンマ油断なりません...笑。

 

アップデート家族

元の黒崎家の原型留めていなくて草。最早ダウングレードの域ww兄と弟wwww

これに関してはもういいですか笑。GとBがツボですwww