2020春アニメ個人的総括
もくじ
- かくしごと B+
- はめふら A
- 波よ聞いてくれ A
- 球詠 B
- 邪神ちゃんドロップキック' A+
- イエスタデイをうたって B+
- 本好きの下剋上 第2クール A+
- LISTENNERS-リスナーズ- C
- 神之塔 B
- アルテ B
- ビーエヌエー B+
- かぐや様は告らせたい? A
- グレイプニル A
かくしごと B+
今作はタイトルから既に「隠し事」と「書く仕事」という感じで、1つの言葉が二通りの意味合いを表している。こういう多岐的な手法が物語中の随所に落とし込まれていて、要するに話を構成する1つの題材(テーマ)をクスッと笑えるコメディ要素にも、哀愁を漂わせるシリアス展開にもシフトさせられる構成の巧さが印象的でした。
個人的にはこれが今作の最たる面白さに繋がる相乗効果を生んでいたと思う。クスっとする笑いもうるっと来る感動も元を辿れば1つの主軸に帰結するので、ABパートにおけるコメディ展開から感動パートにかけて各パートに共通の意味を見出す事が出来る。そのお陰で余韻が残りやすかったし、時にCパートで漂わせてくる未来編への不穏さがより強いものとして表れてきていた。描かれる元の題材が同じであるからこそ、お互いがお互いのパートでの感じ方の度合いを引き上げてくれていた。そんなイメージ。
ただ序盤こそはその2つの要素が見事に絡み合っていたが、中盤以降ではギャグパートと感動ないしはシリアスパートとの繋がりが序盤ほど感じられず、あくまでも各々単体として機能していた印象。故に比較的失速気味でした。
コメディパート及び感動不穏パート単体でも楽しめない事はないが、前者は段々とネタが固定化されてきて多少新鮮味に欠けてきていたし、後者に関してはどちらかといえ感動というよりも、一体未来では何が起きているのか?という疑問を掻き立てるだけで核心には踏み込まない引きで終わる最終話ありきの仄めかしが中盤以降では多く行われ、あまりその回単体での面白さにはさほど繋がらなかった印象。
ただ逆に言うと、これまでの仄めかしの真相が明らかとなり、笑いとシリアスが再び共存を果たす最終話は良い着地だったと思う。笑って泣ける、今作はこの2要素が絡み合って初めてMAXが味わえる事を痛感するんだなと痛感させられました。
はめふら A
今作に関しては主に2つの見方があってそれを行ったり来たりしながら視聴していた。
1つ目は今作の本筋である「破滅フラグ回収」に着目して観る視点。
2つ目は本筋とはやや逸れた異世界日常モノとして観る視点、この2つです。
まず言っておきたいこと。今作は悪役令嬢に転生してしまった主人公がゲームシナリオに定められた破滅フラグを如何に回避していくのか?というメインとなる軸ではあまり楽しめず、むしろそれらが実質全回収された後書き部分の方が魅力的に感じるという何とも珍しい作品だった。無論、上記のA評価は9:1で本筋以外に付けさせて頂きました。
というのも、カタリナが幼少期から破滅フラグを回避しようと動き出す序盤の1話~3話。まだここは2つ目よりも1つ目の見方が中心になるのだが、前者の視点で観た時、カタリナが破滅フラグを回収していく過程に対して「え?そこはなんでそうなるの?」という疑問点が多く観受けられてしまった。ここが1つ自分が今作の向き合い方に苦労したポイント。
ジオルド√にしか登場しないはずのキャラであるカタリナが何故アラン√下の展開(アラン×メアリの婚約話)を聞いて破滅を察知したのか?前世でも未プレイの√な故に情報が少ないから、本来であれば関わらない方が破滅回避の観点からすると最適なはずのニコル√に何故自ら踏み入ってしまうのか?等、本筋だけに注目して視聴するとそことは矛盾するカタリナの行動やゲームシステム上の不確定要素がどうも腑に落ちなかった。
ですが、3話の途中で新しく加わったのが上記に述べた「異世界日常モノ」としての視点。加わった最たる理由としては、幼少期の時点で実質的にカタリナの破滅フラグが全て回収された事にある。故にたとえカタリナ本人が本筋を無視した行動を取っても、自分が食べたい様に食べ、接したいように人と接するカタリナというキャラクター性に純粋に笑う、癒やされる。カタリナを巡って繰り広げられるバチバチ模様の微笑ましさ。破滅する事はもうないのに思案を巡らすカタリナの空回り模様等。
本筋の事を考えなくても良くなり、ほのぼのとした日常風景だけに感情の全てを吐けるようになる。これがマジで大きかった。いつまで経っても破滅フラグ回収に対する疑問点が払拭しきれない序盤と比べて格段に観やすくなったと思う。
その中でカタリナのメイドさんやマリアの過去を掘り下げながら、カタリナとの絆をより強固なものにしていくほんわかepi.も良かった。
ただ終盤で再び破滅フラグ要素を追加してきた事。
また不明点に気を張らないといけないのかと思う反面、期待していた所もあった。特に10話で令嬢達がカタリナの悪事を暴きに来る展開。初めは破滅フラグが既に回収されているという現状を加味して、どうせそんなのただのでっちあげだろ?と緊迫感は一切なかったが、後に彼女達が何者かに操られていたのでは?という流れになってからは、もしや今までカタリナが本来のゲームシナリオをねじ曲げてきた事の弊害(フリ)がここに来て回収され始めるか?という今までのフリ回収に胸を躍らせる本筋面の面白さが期待出来たが、作中のキャラに全て収まってしまいスケールダウン。どうせカタリナ包囲網に加わるんでしょ?とどうしても肩透かし感が否めなかった。
また7話で主人公視点が入れ替わった事によって、ここから今までカタリナの知らなかった様な新たな破滅フラグを回収していくという面白そうな展開も見込めたのに速攻記憶をなくすのかと....。あっちゃん=ソフィア、そのあっちゃんとカタリナが再会を果たす11話に向けての布石だったのかもしれないが、8話のようなOVAを挟む尺に余裕があるのなら、もっと本筋面で面白くする事も出来たのではないかなと。
全体を通して終始本筋<OVAという構図を覆せなかった印象。それが悪い訳ではないが、2期まで続くからにはやはりOVAだけでは物足りないものがある。しかも本筋の部分をもっと盛り上がらせる事が出来たはずなのに、そこより日常モノとしての色を強く意識しすぎたのは2期をやるにおいてあまりにも取っ掛かりが足りない様に思えてしまう。更に1期の最終話でカタリナ自身が友情ENDだと認識した以上、もう彼女が最早存在しない破滅フラグを回収しようと空回りし続けるという1つのコメディ要素が消えている訳で。基盤の部分の面白い所が1つ無くなった状態で2期はスタートする事になる。
ただ、まだ1期終了時点ではまだカタリナの中であっちゃん=ソフィアというのを認識していない。嘗て分かれ離れになった親友と再会させる為にも、そこを本筋を捉える事は出来るが、1期を超えてくる気配が現状だとないのが正直な所。
波よ聞いてくれ A
アニメーションというよりかは聴覚で十二分に楽しめる作品。
ニッチなものの例え方1つとっても笑える。そこ突くか!と思うばかりの独特なワードセンスや漫才のようにテンポ良く流れるボケツッコミの応酬ばりの掛け合いを聞いてるだけで気づけば毎話が終了している感覚(マジで)。また忠也を中心に動くトレンディドラマ展開筆頭に揺れ動く人間ドラマを見せられながらも正直に思い、喋り、行動するミナレの生き様から溢れる人間臭さ。それらがラジオの音声、波となって少し皮肉愚痴交じりに解き放たれるのが大変気持ちが良かった。
球詠 B
まず全体的に作画が宜しくない。1話時点で大腿部に魅力を感じなくはなかったが、第1印象の入りで純粋にキャラを可愛いと思えるかと言われれば正直に言って否。それほど作画面には期待出来なかったし、更に試合では手描きだけではなく所々3DCGに差し替えた作画が加わる事によって違和感が半端ない。3DCGで描かれた人物の表情が固まって動きが無くなり、選手の感情が画だけでは伝わりずらくなったり、本来なら激しいシーンになるはずのタッチアウトの場面が予定調和のような味気ないものになってしまったりと特に弊害が目立った。
ただストーリー面ではきらら作品らしい良さがあったので視聴継続をした次第。
特に序盤と終盤。
嘗てのチームメイトからの圧力で変化球を封印してきた詠ちゃんが幼馴染みとの再会によってトラウマを払拭していく様や活動停止の日々の中でもう一度この場で野球をしたいというキャプテンの思いがバッティング描写に表れたりと。
ちゃんと下地としてキャラクター1人1人の背景とそれに伴う野球への思いを掘り下げていくクール序盤の丁寧な展開運びには素直に好感が持てた。昔からの憧れ1つで全国レベルの剣道の腕を捨てて野球部に入ってくるキャラがいたり、当時メンバーも少なく弱小だった新越谷に強打者が入部する事になる理由付けの所などは話の取っ掛かりが薄いと感じる所もあったが、違和感を覚える程あり得ない流れではなかったしそこよりもちゃんとキャラに寄り添って描く構成の素晴らしさが勝っていたから、そこは大した問題にはならなかった。
このようにキャラクターに焦点が当たった時のストーリー面の面白さは今季トップレベルだったが、肝心の野球に関する展開である中盤は微妙だった。
具体的には5話からの合宿回。
今まで仲間集めが中心だった序盤から、どのように今後の試合に勝っていくか、彼女達が如何に成長を遂げていくかという野球アニメにここからシフトしていく予定だったのだが、正直ここの合宿展開を描く意味がさほど感じられなかった。合宿初日に詠ちゃんの他に投手を育成する為新たに補欠投手が抜擢される。個人的にはそれを受けてから如何に投手としての成長が描かれるかがこの合宿回における1つのテーマだと思ったのに、大してそこの練習動向だとか新たに選ばれた投手側の心情があまり映し出されずに淡々と合宿を終えてしまった。故に観応えに欠けてしまった次第。
故にそこから試合になっても、そもそも選手達の成長を感じられてない訳だから1つ1つのプレーに対して盛り上がる事が出来ない。なんで急にバントが巧くなってるの?とかという恐らく合宿で培った成果だとは思う。ただそこに対して視聴者がついていけていない。此方側のリアクションを伴わないで試合が動いていた印象。芳野マネの采配のすごさにしか注目出来なかった。選手側には一切感情を持てなかったのが残念でした。
唯一意義があったとすればやはり芳野マネと希さんとの掛け合い。行きすぎた努力をし続けるに至る希さんの過去のトラウマを芳野マネが優しくほぐし、メンタル面の傷が完治しきっていない彼女をあえて4番に指名することで成長を促す展開は良かった。ここがフリとなって最終話で希さんから芳野マネに宛てた特大ホームランに感動を覚えられた訳で。布石として合宿に落とし込むそれだけの理由はあったかなと思います。
邪神ちゃんドロップキック' A+
日常系なのに流血必至で此方としては可哀想と思えてしまうグロシーンとのギャップについ1話切りを考えた1期冒頭とは一転、2話以降でゆりねちゃんにぶちのめされるに相当する邪神ちゃんのクズっぷりが露呈されてからは、そのグロシーンに正当性が促され、ぶちのめされるまでの流れが笑えるギャグとして見なせるようになり終始楽しめるようになった邪神ちゃんドロップキックの1期。
2期でも同様に楽しめるかと思いきや、2期冒頭でぴのを初めとする新キャラが追加。
この流れに最初は疑念を抱いた。何故なら上記にも述べた通り今作の面白さの中枢にいるのは紛れもなく邪神ちゃんだからだ。彼女が何かしでかして最終的にゆりねちゃんにしばかれる。この一連の流れだったり、とにかく不憫なぺこらの動向だったりと1期時点の主要キャラのやり取りで十分今作の面白さは担保されていた。
そこに新キャラ等の追加と来た。しかも少しぽぽろんとキャラがかぶっていると。
個人的な思考としては彼女達に尺が割かれる事によって、自然と邪神ちゃんの出番が減って、1期のような安定性が損なわれるのではないか。特に2話辺りからトーンダウンが危ぶまれたが、まっっっっっっっっっったくの杞憂でしたね。
3話からギャグ然りキャラ達による掛け合いの微笑ましさ然り1期を超える勢いで面白かった。ジョイマンや歴代ドラマ作品のパロディネタや登場キャラが今作を制作しているスタッフ名に触れたりするメタ展開は勿論だが、邪神ちゃんにストレートをかましたり、彼女をハブるまでのテンポだったり(この素早い切り替わりが最高に笑える)、妖怪展における邪神ちゃんいじり等、1期よりもゆりねちゃんサイドから邪神ちゃんへのアプローチが増えてきて、単純に笑える要素が増えたのは勿論あるが、個人的にはただ今作に対し笑えるか否かという冷めた視点と観るのではなく、1期から観てきて段々と作品への愛着が芽生えた事が面白さが増した一番大きな要因なのかなと感じている。
具体的にはまずビジュアル的にキャラクター自体が本当に可愛く見えてきたのが1つ。
これは個人的な感触ですし1期でも同様の手法を取っているのかもしれないが、目を文字通りの点にして描いたり、顔のパーツ自体を多少崩して描いたりする等、演出でキャラを可愛く見せる画がいくつも見受けられて、率直に可愛ええええと感じた次第。
そしてもう一つは、キャラにギャップ性を加えて感動に持って行く展開。
これがズルイ。従来クズキャラの印象が強い邪神ちゃんのイメージがガラッと変わる回を入れてきたり、いつもはATMと呼び金を媚びるメドゥーサとの友情回がギャグの中にしれっと入ってきて1期からの積み重ねで、キャラ達そのものの関係性が尊く感じられ、仮にギャグに笑えない時でも彼女達の掛け合いを眺めているだけで十分面白いというまさにきららの最終形態になってしまったのがもう最高です。
笑える要素も豊富、おまけにキャラへの愛着も湧いてしまった。
こうなった日常系作品はもう最高と呼びざるを得ませんよ。ありがとう。
イエスタデイをうたって B+
ご都合展開一切なし。本当にリアルな人間像がそこにはありました。
何が自分の悪い所なのかも分かってても変われない。これが現実。
いや何が悪いのか分かってるから変わろうとしなよ、そんな全うな視聴者側の指摘など通用しない。なぜならこれがリアルな人間の姿だから。共感する節はあった。
ただこの等身大の人間像を主要キャラにしたとき、やはりストーリーとしての動きはなくなるのは否めない。勿論、そういう人間としてのリアルさが一貫されて描かれている事、そしてそこに共感を覚える自分がいることも。
ただそのリアルさによる膠着状態が1クールの大半を占めてしまうと、どこかで「流石に展開動いてくれないかな」と視聴者側の自分が出てきてしまう事が中盤以降は多々あった。
故にどこまでキャラに感情移入が出来るか、共感する自分と視聴者視点の自分との戦いでもあった。
そういう意味では自分は今作を100で楽しむ事は出来なかったと感じている。
作画面の透明度や繊細さが素晴らしいのは分かる。
ただこの「イエスタデイをうたって」という作品に対して自分が感じる面白さには直結しなかったのが正直な感想。強いて言えば交差点での陸生と晴の場面。
そこ以外は基本的に作画単体ですごいという印象で、ストーリーの流れを汲んで作画面の細かさが意味を持ったりはしなかった。故に動画工房さん凄いとは思ったが、「イエスタデイをうたって」という作品の評価に繋がることはあまり無かった。
その他はTwitter見て初めて気づいたものが多く、視聴中に感化されはしなかった。
本好きの下剋上 第2クール A+
終始ド安定。且つ不動のトップクラスの走りを今季も見せてくれた。
今作で一番印象的なのがストーリー構成の緻密さ。これを随所で感じた。
相変わらず前フリの差し込みから今作の丁寧さが身に沁みる。
物語中において何か事態が動く時。その理由がしっかりしていて、その納得材料として事前に敷いた布石(前振り)が最終的に意味を持って効いてくるという流れがもう完璧だったなと思う。
1つ例を挙げるとするならば16話で傍仕えのフランがマインを主としてみなすようになる転換。
新官長
確かに17話18話でギルとデリアがマインを主としてみなすまでの流れが従来における今作のテンポからすると早いという声もあるでしょうが、その中でも孤児院の存在や寵愛を求める子供ながらの感情を交える等ちゃんと彼等に寄り添った構成で、彼等の改心に対し納得出来る材料は揃っていたと自分は思う。
LISTENNERS-リスナーズ- C
前季における「はてなイリュージョン」とほぼ同着の作品。
序盤こそは、田舎から憧れの舞台を夢見る少年が突然現れた少女の無くした記憶を探す旅に出る、という王道ながらも本筋がしっかりしていて十分今後に期待が出来る真っ当な開幕だった。
だが2話早々で、今作の初期設定としてあげていたプレイヤーvsミミナシという構図をぶち壊す。今までミミナシが人間を襲い、その中でプレイヤーという存在がミミナシに仇なすという立ち位置だったのに、突如ミミナシとプレイヤーとが手を組んだ敵が主人公達を襲うという意味の分からない展開をおみまい。
これがある程度話が進み、プレイヤーvsミミナシという因縁についてややミミナシの正体にある程度視聴者側に理解が進んだ上でのクライマックスでこういうメタ展開を持ってくるならまだ分かる。
だが、まだ2話時点では今作がどういう世界観で主人公達がこれから何をしていくのかという大まかな物語の方向性を示す段階にあると個人的には感じている。
故に当然のことながら、この時点でプレイヤーとミミナシが何故戦っているのかという初期構図の事さえあまり分かっていない事が多いし、序盤はこの構図のままで話を展開させていきながら上記で述べた様にそれぞれの因縁やミミナシの正体などに迫っていった方がストーリーとしてもわかりやすいと思うのに、早速終盤で描かれるような展開を放り込んでくるから此方側からすると?マークに?マークしか浮かんでこない。
ここから今作への疑念が生まれその後もとにかくお話のつくりがなっていなかった。
他にも、物語の流れを説明じみた台詞のみで消化させている事。昔はこんな事があってこういう出来事があってその時自分はこんな感情だった、という風に過去形で描くから事情こそは分かるがあまり真に迫ってこないというか没入にまで至れない。
まだ理由がマシ。肝心の理由付けさえあざなりになっている回もある。
何故偉い地位にいるキャラが主人公達に心を動かし、任務を託したのか?
結局ミミナシとはどのような存在か?
理性あるミミナシ(この時点で意味分からん)を突如凶暴化させる光の正体は?等
こういう物語の根幹にも関わるような設定に対する説明や、物語を転換させるに相当するだけの理由付けがマジで取って付けたかのような雑さ加減。
一番酷かったのは、キャラクターを不要な展開を促す為、無慈悲に死なせたこと。
7話で初めて制作陣に嫌悪感を抱いた。新鮮な体験でした。
ストーリーは致命的。残った音楽面も個人的にはイマイチだった。
一応今作は音楽アニメの一面も持ち合わせているから、昨年の春アニメである『キャロル&チューズデイ』の様な音楽センスがあるのであればストーリーにも目を瞑れたかもしれないが、一切ハマった曲が自分の場合なかった。もう庇いきれません。
神之塔 B
全体的にキャラ背景の掘り下げが足りないせいで観応えに欠けていたかなと。
「何故塔に登りたいのか」←今作の本筋は非常に単純明快な故に、ここの動機の部分を各キャラで如何に深く掘り下げられるかに今作の面白さが決まってくると感じている。背景を描いてさえすれば、そのキャラが何らかの行動を起こした時に、味わい方が変わってくる。それらがぶつかり合う事で駆け引きが生まれ、作品としての面白さに変わってくると思っていたし、そういうのを今作には期待していた。
ただこの作品は主人公以外その動機の部分が一向に描かれない。何故塔の頂上を目指してるかが分からないので、試験に苦悶する試験者の様子を観て共感することが出来ず、あなんか困ってるなー程度の一歩引いた状態で視聴していたのが序盤~中盤。
しかもその試験内容自体も単に水の壁を通り抜ける試験だったり、複数ある扉の中から正解の扉をヒント無しで選ぶ試験だったりと基本的にひねりがなくて味気ない。
故に今作のどういう所を楽しんでいたかといえばストーリーよりかは、ワニキャラで感情ダダ漏れのラークさんの動向だったり、殺人武術(笑)の使い手ながら弱キャラのシビスさんに笑ったりとキャラアニメの側面が非常に強かった。
だが回が進んでいくにつれて、少しずつ主人公以外のキャラから塔に登る理由が過去回想を交えながら明らかになっていって序盤に望んでいた流れに期待。
そして期待通り、それらの想いがぶつかりあって交錯する第9話はようやく今作の強みが活かされた気がします。
ただそこ止まりだったかなと。
試験者同士でいざこざしていたのが、試験官から敵が現れた事によって試験者達が団結してしまったのが残念。
デスゲームとしてはやはり参加者同士で駆け引きをして争いあってナンボ。
そこから絆が生まれるならいいが、そもそも今作の登場人物は基本的に良い人が多すぎるが故に、そこまで争いという争いにならない。しかも塔に至れるのは1人だけ、とか争いを促す設定もないから、友情が芽生えるまでの過程が生ぬるく感じてしまった。
ここもデスゲーム作品として1つ残念な所でした。
繰り返しになりますが、今作は塔に登る各々のキャラクターの動機、そこに至る背景が掘り下げられれば掘り下げられるほど、面白くなるという方程式があると思っている。
最終話が比較的盛り上がったのは、今まで不透明だったラヘルの塔に懸ける想いは描かれたから。ここが描かれてさえいれば陳腐な試験内容だろうと関係ない。
もし2期が描かれるのであれば、その部分を重点的に描ききって欲しい所です。
アルテ B
設定や世界観にはあまり斬新な特質すべき所や爆発こそなかったが、シナリオ面が安定して秀逸。
これは元の原作の良さもあるのかもしれないが、やはり今作のシリーズ構成と脚本を担当された吉田玲子さんの手腕が光っていたと思う。
貴族、女性というマイナス面に立ち向かうアルテの気概←主軸
その気概を嘗てのレオ自身に投影させ、アルテと親方の共通項を見出した第1話の転換。
貴族、女性というマイナスを気にせず向けた善意。
これをきっかけに優しさと本当に本人の事を考えた思い遣りを履き違えていたアンジェロの気づきに繋げた第2話。
売婦というマイナスでも、その職の為に捧げた努力は何より尊いということを示した第4話。
男尊女卑をベースとしたマイナス面をプラスへと好転させるストーリーの転換のさせ方(取っ掛かりの設置)がとにかく巧かった。
その中で女性、貴族という在り方を認め、それらを強みとして画家を目指すアルテ自身の成長に繋げる物語の着地点も良かったと思います。
ビーエヌエー B+
今作を視聴するにあたって感情と理性。どちらが最も大きく働くか。
ここ次第で評価が大きく揺れ動く、そんな作品でした。
個人的には前者パターンの展開は今クール屈指の良回となり。後者パターンの展開は凡作に落ち着いてしまいました。平均してB+が妥当かなと。
今作のテーマとして取り上げられていたのは獣人と人間の対立構図がどうとか、獣人内における差別構図だとか割と重めなテーマ。
これを如何に調理するか、という所に今作の面白さが左右されたのかなと。
何故急にみちるの足が速くなり豪腕になったのか。どういう風にして強豪チームに勝っていったのかが不明な所がある。そういう理性から来る疑問を大幅にかき消すアクション作画の振り切り具合。弱小野球チームからのし上がっていく熱い下剋上ストーリー、違法賭博が横行する業界に抗って監督の青春を取り戻すオチが最高に面白いし清々しい!今作はこのように理性よりも感情で味わう部分が大半な構成で仕上げるのがベストだった様に思う。現に今作で最も評判が良いのは紛れもなく5話でしょう。
そこと最終話以外は、基本的に理性の部分が先に機能してくるストーリー運び。
決してこの流れは別に悪くはないのですが、如何せんオチに相当する部分が無く爽快というよりかは多少後味の悪さが残るラストが多く(テーマ的にしょうがないとは思いまますが...)、その中でみちるの獣人化に関する謎を散りばめたりする等、ラストのカタルシスありきの展開も観受けられ、単発であれだけの爆発力があった5話を観てしまったというのもあり、理性パート単体だけでは物足りなさがあったというのが正直な印象。
また、個人的に気になったのは4話でニーナに酷い目を遭わせた人間が故意だったのか誤りだったのかという所、そういう人間サイドの心情を一面のみでしか掘り下げ切れていないのもどうなのかなと。あくまでも人間は獣人を迫害するという一括りとしてしか捉えられていないということも描き方として少し足りないと感じてしまった次第。
かぐや様は告らせたい? A
抜群の安定感と笑いを提供。
1期に引き続き会長とかぐやとのシーソーゲーム然り、藤原書記持ち込みゲーム展開然り等、しょうもない事を面白くさせるのが相変わらず巧いなあと。
個人的には前振りからオチまでの高低差によるコメディが今作で特に好きで、具体的には偉大な四宮グループの説明から始まって如何にかぐやが優れた人物なのかとか、その医者が世界の3選に入っている云々という解説を織り交ぜて如何に名医であるかを事前に解説してフリを効かせてから、常人を下回るしょうもないオチに持って行くこの落差。最早王道とも言える流れがまあ笑える訳です。8話の「かぐや様は診られたい」なんかはその手法を用いた代表的なギャグ回で今季で最も笑わせて頂きました。
また1話毎の構成面でも、1期の様にをほぼ1話完結でブツ切りにするのではなく、回毎の内容に繋がりを持たせて2期では描かれてた事で、ストーリー性が追加されたのも面白さに繋がっていたと思う。Aパートで仄めかされたかぐや姫の末路を反面教師として、会長の任期満了に抗っていく15話のCパートまでにかけての流れは恐らく前期には無かった今作の良さが窺えていたと思う。
グレイプニル A
序盤こそはただのフェチアニメ。ヒロインに弱みを握られて主人公が言葉責めを受けるシチュだったり、気を失っているヒロインを、主人公が真面目ぶりながらもスカートを脱がそうとするシーン等、本能的にそそららえる展開が多かった。加えてスピード感ある作画が純粋に楽しめる回もあった。
だがこれらの要素は今作においてはあくまで付随的なもの。何かもう少し作品に没入させてくれる何かが欲しかったというのが序盤の印象。
その何かの部分を見事に埋めてくれたのが中盤。故に評価はばく上がり。
今まで登場してきた化け物がなぜ故にその姿となったのか。まだ表面的な所ではあるが、その化け物化を促した宇宙人と名乗る人物の目的。何よりその化け物達の内に秘めている「変身願望」。このワード提示で作品の主軸が明かされたことで、果たして中身を必要とする修一の変身願望とは何か。そしてこれから現れる化け物の変身願望とは何か。という作品の見方が鮮明になり、エロやアクション以外の視野が広がってしっかりとストーリーとして面白くなっていった気がする。
5話なんかは特にそう。ただ異形の姿のまま暴れ回っているのではなく、各々が抱く信念に沿った変身願望を持っているから、頭がイカれているとしても、相手側の根本となる思いは理解出来るし、理解出来るからこそ人を殺す以外の方法で奴等の欲求が満たされる事で、仮に戦いの決着が片方の死をもたなくとも納得出来る。故に全く安っぽくならないというデスゲーム作品本来の強み=緊迫感をを味わえた。
「変身願望」というキーワードが以前に明かされた事によって、敵の心が透ける様になったのが面白く感じた要因なのかなと。出来れば人を殺したくない修一と殺す意思の元戦うクレア間のの意識のせめぎあいも観応えがあった。こういうストーリーという根幹がしっかり機能していると、そこに付随して迫力ある作画面も評価に繋がる。
また7話のシナリオも個人的に一級品。他人の為に動く2人だからこそ、互いが互いを補完しあって真の強さを成すという展開。同時に修一と吉岡さんの完全さ。今までタッグを組んできた修一とクレアの不完全さをも示すという流れ。5話同様、各々の感情の動きがバトルに影響を及ぼすストーリー運びは今作屈指で唸らされた。
だが、ここまでストーリーを真面目に描いてきたのが仇となったのか、今作の主軸でもある修一の変身願望を紐解くにあたり、そこにいつかは繋がってくるであろう途方もない過去回想を最終話目前で描くという見切り発車展開。
案の定、不明点は一切解決されず。イマイチ煮え切らない構成で幕を下ろしてしまったという点でこれまでせっかく積み重ねてきたストーリー面の面白さが終盤に関しては無くなってしまった印象。今までは「変身願望」というキーワード提示の元、そこに関わる各人物同士の化学反応が最たる面白さだったのに、終盤に関しては、キャラが何を考えて何を思ってそういう行動を取ったのかという動機付けが個人的には足りなかった様に思える。特にエレナの再度に渡る修一の記憶封じには納得が出来なかった。
やはりこういう真面目な能力系デスゲームものを1クールに収めようとすると雑なおれたたエンドになってしまう事は避けられないのだろうか。これでは同じジャンルでありながらツッコミ所ありきのギャグテイストで仕上げてきた「ダーウィンズゲーム」のシナリオ構成が正解だと言われているようなものではないか。
今作に興味を持つきっかけに値する骨の部分。そこからの肉付けは見事だったが、終盤にかけてその肉が腐っていって、骨のみが最終的に残る。そんな作品でした。